ライフ

最も入手困難な日本酒「新政」の醸造家 東大卒の異色の経歴

若手醸造家のスター的存在、新政酒造の佐藤祐輔さん

 いま最も入手困難、ネットでは定価の10倍以上のプレミア価格で取引されることもある日本酒が秋田の新政(あらまさ)酒造だ。『新政 No.6』は、ワインを思わせるようなロゴデザインがパッと目を引く。味は米本来の持つ甘みと酸味をふくむ、爽やかな飲み口で、ワイングラスに注いで味わう愛好家も多い。

 若手醸造家のなかでもスター的存在の新政酒造・佐藤祐輔さん(39)は、異色の経歴を持つ。東京大学在学中はビートルズとボブ・ディランが好きな文学青年。アメリカ文学にどっぷり漬かり、20代で世界中を旅し、ヒッピーカルチャーの足跡を追っていた。しかし、ある時飲んだ静岡の『磯自慢』のうまさに衝撃を受け、家業を継ぐ決意をする。

 2007年、32歳で蔵に戻り「8代目」を継承すると「伝統の蔵が、意味不明の狂った蔵になった」と本人が笑うように、斬新な酒蔵に生まれ変わった。

 新政酒造は伝説の「6号酵母」発祥の地。低温でも醗酵力が強く、東北の寒冷地でも酒造りを可能にした革命的酵母で、曾祖父が発見者だった。しかし、味や香りの個性が弱いため、次第に使われなくなる。佐藤さんはまず、その昭和5年生まれの、半ば忘れられていた旧型酵母を、現代の土俵に引っぱり出してきた。

“現存最古”の酵母がもたらす、涼やかで奥ゆかしい香りは、華やか一辺倒だったトレンドに一石を投じる新鮮な「作品」となった。以来、秋田県産米と六号酵母と奥羽山系の湧き水だけ、添加物一切なしの生もと造りで、シンプルな醸造を徹底。いつしか、そのブランドイメージは「ザ・ネオクラシック」と呼ばれるまでになった。

 今後はさらにピュアでモダンな味を求めて、ホウロウタンクから木桶に移行していく方針。より伝統的製法へと舵を切る。

撮影■佐藤敏和

※週刊ポスト2014年6月27日号

関連キーワード

トピックス

嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
SNSで「卒業」と離婚報告した、「第13回ベストマザー賞2021」政治部門を受賞した国際政治学者の三浦瑠麗さん(時事通信フォト)
三浦瑠麗氏、離婚発表なのに「卒業」「友人に」を強調し「三浦姓」を選択したとわざわざ知らせた狙い
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン