超高齢化・人口減少は特に地方において顕著で、2007年に財政破綻した北海道夕張市では、過去50年で人口が10分の1以下に激減した。その夕張市の再生に取り組むのが、2011年に30歳の若さで市長に当選した鈴木直道氏(33)だ。
東京都職員という安定した職を捨てて月給25万9000円の市長に転身。年収は200万円近く下がり、選挙で落ちれば職を失うリスクもある。それでも夕張再生のために奮闘する同氏は、人口減少に直面した国家に何が足りないと考えているのか。
──夕張市長就任後すぐに打ち出したのが、人口減少に対応して都市機能を中心部に集約する「コンパクトシティ」の計画だった。
鈴木:夕張はもともと炭鉱の町として栄え、最盛期の1960年には人口12万人弱の都市でした。それが石炭産業の衰退によって減少に転じ、さらには財政破綻により、昨年ついに1万人を切った。にもかかわらず、インフラは10万都市のスケールのまま残っていたのです。
現在約5400世帯の夕張市には公営住宅が約3700戸あります。炭鉱会社が撤退する時に市が引き取ったものがほとんどで、世帯数に対する割合は全国で一番高い。入居率は低いのに維持費だけで年間数億円が費やされてきました。コスト削減と行政サービス効率化、持続可能な地域社会の構築のために住宅再編が急務でした。
──50年あまりの間に有効な対策が取られなかったのはなぜか。
鈴木:夕張に限った話ではありませんが、「選挙」の問題があったと思います。住民が「市長たる者は人口を増やして地域を活性化するために働いてほしい」と考えるのは自然なことです。夕張では石炭産業の衰退以降は「炭鉱から観光」をキャッチフレーズにリゾート開発に邁進した。「10万都市の栄光をもう一度」という考え方で一時期は評価もされましたが、結果莫大な借金を抱えてしまった。市内には今も立派なホテルが複数ありますが、すべて市の所有で固定資産税は一銭も入ってきません。
──政治家が景気のいい話ばかりをして、「負の遺産」が残った。
鈴木:もちろん夢を語るのも政治家の仕事です。ただ、これからは現実を直視して未来に備えることも必要です。コンパクトシティを唱える都市は少なくありませんが、その多くは中心市街地を活性化して緩やかな住民移転を促していくスタイルです。
夕張では全国で初めて、人口減少を前提にして町の集約化を進めています。東京でさえ2020年のオリンピック開催以降は人口が減っていくと予測されているのに、現実的に考えれば夕張だけが人口を大幅に増やす姿は描きにくい。