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社員の横領 最初はビビるがバレないと金額エスカレートする

 大手企業社員による億単位の横領・着服事件が相次いで明るみに出た。大手鉄鋼メーカー・三菱製鋼から子会社に出向してクレジットカード管理を担当していた元社員・山本英成容疑者(45)は約6年間で3億円を詐取したとして6月25日に逮捕された。

 この事件以外にも、大手商社・伊藤忠商事では元社員の西口元・容疑者(32)が出向先のニュージーランドの関連会社で約6億円(約700万ニュージーランドドル)を不正に自分の口座に送金し、FXなどに費やしていたとして7月6日に業務上横領の疑いで逮捕された。

 また空調機器メーカーのダイキン工業では、50代元社員が取引先に外注費を水増し請求させて還流する手口で、少なくとも約2億円を着服したとして、同社が刑事告発の準備を進めていると明らかにした。

 共通するのはカード管理、出納業務などを一人でほぼ完結させていた点、そして不正に手を染めた回数が多いことだ。元伊藤忠の西口容疑者は半年間で少なくとも約70回も不正な送金を行なっていたとされる。精神科医・和田秀樹氏の分析。

「何かのきっかけで1回目の不正に手を染めると、その瞬間はビクビクするが、バレないとわかるとハードルが低くなっていったのでしょう。特にカード不正利用などは実物の札束を目にするわけではないから、感覚が麻痺して額が桁違いに膨れあがってしまう」

 三菱製鋼関係者は「このくらいの仕事なら一人でできるだろう、という雑用に近い業務をやっていた人ですが……」と嘆くが、性善説を前提としたチェック体制の甘さが大きな損失を生むことになった。

※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号

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