現在、10~20代の女性を主人公に恋愛やセックスを描く「ティーンズラブ(TL)」の文庫や単行本は、20を超えるレーベルが林立している。老舗は「ティアラ文庫」。2009年6月創刊で累計200点を超す作品を世に送り出す。9月に創刊1周年を迎えるフルール文庫以降も続々と新レーベルが参入している。
各レーベルとも、少女漫画コミックを彷彿させる可憐なカラーイラストの表紙で飾られ、巻中にも複数のイラストを挿入している。作家とイラストレーターはほぼ女性で、プロフィール欄には「星座と血液型」が記されているのもお約束のようだ。
読者の主軸は、各レーベルとも20代から30代、40代を想定しており、女子大生やOL、主婦といった幅広い階層がTLに夢中になっている。
2011年創刊の「マリーローズ文庫」は、TL市場でも乙女度の高さで有名。中世を舞台にティーンエイジャーのお姫様が、めくるめく恋愛とセックスを体験するヒストリカルラブストーリーは鉄板コンテンツだ。同文庫のY編集長は語った。
「創刊翌年の2012年は、TLバブルといっていいほどヒット作が多かったんです。ウチの『不埒なマリアージュ』(仁賀奈作)も一番のヒットを記録しました」
同作は、ヒロインのアシュレイと横暴王子ウィルフレッドとの間に、美姫マリベルが絡む、すれ違いラブロマンス。
王子のプロポーズの言葉は、なんと「早く子孫を残すために、日に三度は性交を義務づける」。堅物のアシュレイは、てんやわんやの騒動の中心にいながら、日々セックスに目覚めていく。
「読者の中心は30代から40代ですが、60代のシニア層にも好評です。
女性は年齢にかかわりなく乙女心を失いません。だからこそマリーローズ文庫では、読者が抱くディズニープリンセスのようなお姫様願望を満たしながら、ベッドシーンもしっかり描写するというストーリーを重視しています」
※週刊ポスト2014年9月5日号