もちろん、経営サイドは社員全員が有給を取得したという前提で、その分の労働力は除外した業務計画を立てなければならないのは当然だ。
「有給制度の意識は、ヨーロッパのように企業側に有給消化率を義務づけ、違反すればペナルティーを科すことも考えなければ高まっていかない」(前出・溝上氏)との声もある。
しかし、企業規模や業種によっては、社員間で有給取得をどう融通し合うか調整する必要も出てくるはず。そんな中、「全社一斉に大型連休に紐づけて有給消化を促すのは乱暴」と、前出の稲毛氏は指摘する。
「たとえば、いま業績が伸びて雇用の流動性が高いのがサービス業で、休みの日に忙しくなる人たちが昔に比べて多くなっています。そこで、“集中有給月間”で9連休を設定しても、ますます休みが取りにくくなる人が増えるばかりです。
それよりも、年間20日の有給があれば、社員が月に1日でも確実に休めるような環境づくりを促したほうが現実的です。3連休に1日足せば2泊3日の旅行に行っても十分骨休めになりますしね。いきなり欧米並みに長期休暇を増やしたところで、経済的な効果も得られにくいと思います」(稲毛氏)
有給消化の理由には、遊ぶ目的以外にも子育てや親の介護など「やむにやまれぬ事情」もある。また、正社員よりも有給が取りにくいパートの利用促進も図らなければ、政府が目指す「休み方改革」は画餅に帰すだけだろう。