安倍晋三首相は9月11日に開かれた経済財政諮問会議で、携帯電話料金の引き下げの検討を指示したが、日本の料金体系はライトユーザーの負担が重く、ヘビーユーザーの利用料まで払わされている構図になっている。安倍首相の指示を受け、総務省は学識者などで構成されるタスクフォースを設置し、10月以降に会合を重ねている。
ケータイショップではスマホばかりが陳列され、店員もしきりに薦めてくる。「詳しくないけど薦められたからスマホにするか」と決めて、結局あまり使わない人は、知らないうちに損を押し付けられているのだ。
前述した総務省のタスクフォースは、そうした状況を是正するための具体策を年内にまとめる方針だが、業界の実態には不透明な部分が少なくない。大手携帯各社は、搾取される立場にある「月間1ギガバイト未満のライトユーザー」が全体の何割いるかという情報すら開示しようとしない。総務省も「各社の経営にかかわるデータなので、1ギガバイト未満の利用者が多くを占める、としかいえない」(総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課)とするのみだ。
業界には、「スマホを持ってはみたけどあまり興味がない」と考える人たちの払ったカネで、ヘビーユーザーの通信料金だけでなく様々なサービスを提供する構造があるとみられている。大手携帯会社関係者はいう。
「『スマホ本体の値段が実質ゼロ円になる』というサービスを各社が行なっています。これは割賦で本体代金を支払う利用者に、その毎月の支払いと同額を通信料から割り引くサービスですが、その原資はシニア層のように機種変更しない人たちの通信料だといえます。ネットをあまり使わない人にも割高の通信料を負担させて、機種を変えたがる人たちへの割引に充てる構図ではないでしょうか」
大手3社にこうした問題について見解を問うたところ、次の様に回答した(回答は各社広報担当)。
「ネットワークの高度化や料金の低廉化に努めている。ただし、不公平感などが指摘される健全とはいえない販売事例もあり、改善は必要と考える。お客様サービスの向上、企業の持続的発展の両面からこれからも取り組む」(NTTドコモ)
「今後のタスクフォースでの議論を注視していく。これまでも新料金や新サービス導入でニーズに応えてきた。引き続き様々な施策を検討する」(ソフトバンク)
「不公平感やわかりにくさはこれまでも総務省の研究会で議論されてきたテーマ。他社と同様当社も真摯に対応を検討する」(KDDI)
※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号