「会社の時価総額を6倍に引き上げた経営陣を創業者の一存で辞めさせるなんて、まるで個人商店ですよ。上場企業のやることじゃない」
そう憤慨するのは料理レシピサイト最大手クックパッドを今年に入ってから去った元幹部だ。
3月24日に開かれた株主総会で、同社を4年間率いてきた穐田(あきた)誉輝・元社長はその任を解かれ、創業者で同社株の44%を保有する筆頭株主・佐野陽光氏が推す岩田林平氏に社長の座を譲った。
クックパッドは、佐野氏が慶應大学卒業後の1997年に創業。料理名を入力するだけで簡単にレシピを調べられるサイト『クックパッド』が女性層を中心に人気を獲得し、2011年に東証1部に上場を果たした。翌年に穐田氏が経営を引き継ぎ、佐野氏は取締役としてレシピサイトの海外展開に専念するためアメリカを拠点としていた。ベテラン社員が語る。
「穐田さんが社長の時に、結婚式場口コミサイト『みんなのウェディング』などを買収する多角化路線で成功を収めた。会社が飛躍したのは佐野さんが渡米したあとなんですよ」
異変が表沙汰になったのは今年1月。佐野氏が取締役会の決めた多角化路線を真っ向から否定し、自身を除く全取締役の交代を求める株主提案を発表した。前出の元幹部は、火種は昨年からあったと明かす。
「昨年11月時点に設置された社外取締役による『特別委員会』では、穐田さん主導の事業計画の承認と社長続投が決まっていた。大株主である佐野さんは別の事業計画を練っていたが、通らず、それですべてをひっくり返して自分の息のかかった岩田さんを社長に据えたんです。特別委員会を構成していた社外取締役も5人中3人が退任することになりました」
経営方針に言及することは株主の権利だが、前出のベテラン社員によると、社内では佐野氏と岩田新社長の解任を求める署名活動が進み全社員の8割近くが応じているほか、新興ベンチャーにもかかわらず水面下で労働組合結成の動きまで進んでいるという。
今回の騒動についてクックパッドに取材したが、「回答を控えさせていただきます」(広報室)とするのみ。
※週刊ポスト2016年4月15日号