通級指導を受けている児童と生徒がふだん通っている通常学級の先生方は、それでなくても大量の業務に忙殺されている。自分のクラスの子が発達障害と診断されたら、その子専用の教育体制をとる必要が生じる。でも、現場にそんな人的資源も対応ノウハウも存在しない。だから、結果、ちょっと目を離した途端、教室の床で赤ちゃんハイハイが始まってしまうのである。
昔だったら、怒鳴りつけて教室の後ろに立たせるなりしていたのだろうが、障害児と診断されたからにはそうもいかない。出来る限り、その子に寄り添わねばならない。しかし、その子に時間を使えば、教室の他の子供たちが「えこひいきだ!」と文句を言い出す。みんなで発達障害を理解しましょうね、わかりましたクラスメイトで力を合わせて寄り添います、だなんて話にはならない。そんな絵空事より、学級崩壊への道のほうがずっとリアルだ。
この問題、解決したいのなら、人的資源を投入し、対応ノウハウを現場が探っていくしかない。各学校に、発達支援教育専門の教師を必置し、1クラスあたりの定員を現在の40人から20人へ、少なくとも30人には減らす。そのぶん教員数は増やす。そうするには、公教育に投じる予算を大幅に引き上げる必要がある。カネと手間がかかる。
いくら急増しているとは言っても、発達障害と診断されている児童や生徒は100人に1人くらいだ。その子のためにそこまでやる?
やっていいのだ。そうして改革した公教育は、診断されない99人にとっても、圧倒的に質の高い学びを提供できるようになるからだ。そしてそれは国力の増強につながる。
私はそう思うのだが、現場の教師たち以外に、どれだけ賛同者がいるのか。45人定員のぎゅうぎゅう詰め教育を懐かしく振り返る大人たちだって少なくない。国民の理解を得るのは、そう簡単じゃないとも思う。