日本人の死因の上位を占めてきた心筋梗塞と脳梗塞だが、その9割は血栓症が原因とされている。血栓が血中を流れ、脳や心臓の血管に詰まることで起こるのが脳梗塞や心筋梗塞である。ということは、原因となる血栓を溶かしてしまえばよい。
すでに脳梗塞治療では特効薬が開発されており、後遺症がまったくない、あるいは日常生活に支障ないレベルまで回復する人たちが増えている。それをもたらしたのが血栓を溶解する特効薬「t-PA」である。
体内には血栓を溶かす作用のあるプラスミンという酵素がある。プラスミンは前駆体のプラスミノゲンから作られ、t-PAはプラスミノゲンをプラスミンにすることにより血栓を強力に溶かす作用を示す。
素晴らしいことに、このt-PAはもともと血管の中に分泌されている物質だということ。なんと自力で体の中のt-PAを増やす方法があるという。新小山市民病院・島田和幸院長が解説する。
「1日30分の有酸素運動を続けることで血管内のバランスが良くなり、t-PAが増えます。運動不足の人は特に効果的です。ウォーキングやサイクリング、軽めのジョギング、ゆったりとした水泳や水中運動など、息が上がらない程度の運動がちょうどいいのです」
食事でも血栓を予防することができるという。倉敷芸術科学大学特任教授で医学博士の須見洋行氏の解説。
「さまざまな試験を繰り返した結果、ニンニク、ネギ、タマネギ、しいたけなどは血栓ができるのを予防することがわかりました。ニンニクやネギ類の場合、アリインという成分が変化し血栓を作るのを阻害すると考えられます。
そして血栓を溶かしてくれるのが納豆です。納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素はt-PAの働きを高める作用がある。効果的な摂り方としては納豆50グラムを夕食時に食べることです。体内のt-PAは深夜2~3時が最も少なくなるため、その前に補充しておくとよいでしょう」
須見氏によれば、コーヒーや焼酎、泡盛、ブランデーなどの飲料にもt-PAを増やす効果を確認しているという。イシハラクリニック副院長の石原新菜医師はこんな方法を提案する。
「運動が苦手な方は入浴でt-PAを増やすことができます。t-PAは、体温が37~39度のときに活性化されます。血栓は就寝中に形成されやすいので、就寝前にゆっくり湯船に浸かるのがいいですね」
血栓を溶かすチカラを向上させる生活習慣を身に付けながら、体から出されるSOSサインにいち早く気が付くことが大切だ。
※週刊ポスト2016年6月3日号