マンションに住んでいて、正直ちょっと面倒なのが管理組合の役員。無関心層が多く、なかなか役員の成り手がいないマンションは少なくないが、持ち回りの住人役員に組合費から報酬を出すのは問題があるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
私の住んでいるマンションでは、管理組合の役員が1年交代の持ち回りです。その役員の仕事はけっこう大変で、ゴミ収集所の掃除までしなければいけません。なので少額でも役員には組合費から報酬を出したらどうかと提案したのですが組合は却下。持ち回りの役員に報酬を出すのは間違っているでしょうか。
【回答】
建物区分所有法では、マンションの個々の区分建物の所有権者は全員でマンション管理のための団体を構成すると定めています。この区分所有者の団体が、いわゆる管理組合です。
管理組合は、集会を開いて管理規約を定めたり、理事長などの代表や役員などの機関を決めることができます。しかし、区分所有法では、管理組合の集会の決議を実行し、実際にマンションの敷地や施設の管理を行なうものとして『管理者』という制度を定めています。
この管理者は、管理組合が集会で選任できます。多くの管理組合では、理事長など組合の代表者がこの管理者となって、マンションの共用部分や敷地の管理に当たっています。ご質問の場合もそうだと思います。
この理事長にせよ、管理者にせよ、管理組合という団体から委任される関係になります。住民のひとりが私人として理事長や管理者になった場合は、民法の委任の規定が適用されます。民法では、とくに合意がない限り、受任者は無償ですから、理事長は報酬をもらえません。
ただし、仮に管理者を業者に外注すれば、報酬の支払いは当然です。うっかり報酬を決めないまま委任しても、業者は商人であり、その行為は商行為とされるので商法の適用を受け、管理組合には相当な報酬を支払う義務が生じます。そうであれば、住民が理事長や管理者として行なう業務の程度に応じて過分ではない報酬を受けることは問題がないと思います。
報酬を支払う場合、管理組合のお金を使うのですから、規約で報酬の支払いや額を決める必要があります。その場合、集会で区分所有者の頭数と面積割で決まる議決権の各4分の3以上の賛成があれば、規約に報酬に関する規定を追加することができます。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2016年6月24日号