医療費は支払って終わりではなく、そこからさらに「取り戻せる」と指摘するのは、町田税理士・公認会計士事務所の町田孝治氏。
「病気になり仕事もストップした上に高い医療費を支払った人から、健康な人と同じ基準で税金を取るのは不平等という考えから、日本では税制上の『医療費控除』が数多く用意されています」
医療費控除とは、1年間の医療費が合計10万円(所得200万円未満は所得の5%)を超えた場合、確定申告すれば一定額の税金が戻ってくる制度のこと。医療費だけでなく、介護サービスの費用も医療費控除の対象となる。
日本のサラリーマンは確定申告をすることが少なく、医療費控除はあまり知られていないが、実は適用の幅が広い制度だ。
「医療費控除は夫と妻など、“生計を一にしている間柄”ならまとめて請求できます。妻だけでなく、実家から離れて暮らす大学生の子供や、地方に暮らす高齢の両親に仕送りをしている場合なども、同一生計と認められます」(同前)
たとえば、課税所得が400万円の世帯(所得税率20%)の医療費が年間20万円の場合、超過分の10万円が控除対象になり、2万円が戻ってくる。また、「医療費」として認められるのは病院の窓口で支払った金額に限らない。
「基本的に“治療に要した費用”かどうかが基準になります」(同前)
町田氏によれば、病院や調剤薬局で払った治療費や薬代だけでなく、ドラッグストアで購入した市販薬や治療のための保護メガネ、松葉杖や補聴器も医療費控除の対象に含まれる。さらに通院費は、電車やバスはもちろん、急を要する場合はタクシー代も認められる。患者本人だけでなく、付添人の交通費も同様だ。
医師が認めれば、さらに多くのサービスも対象になる。高血圧症や高脂血症等の症状があり、医師からの運動療法の処方箋がある場合は、厚労省が指定するスポーツジムの利用料も医療費控除の対象になる。医師の指示に基づく鼻炎用マスクや血圧計、加湿器などの購入費用、治療のためのマッサージ、はり灸なども認められる。
「定期的に病院に通い続けていると、それに付随して医療控除の対象となる諸経費が発生しやすい。治療目的と考えられ得る出費の領収書はきちんと受け取って保管しておきましょう」(同前)
医療費制度を理解すれば、安くて質の良い治療が受けられるのだ。
※週刊ポスト2016年7月15日号