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図書館が学生の使用を制限 元に戻す方法を弁護士解説

 受験生にとって夏場は正念場。自宅ではなく、あえて図書館で勉強する受験生は少なくないが、その使用が制限された場合、元に戻す方法はないのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 市の図書館が学生の閲覧室での勉強を禁止しました。理由は学生が長時間座席を占有するため、他の利用者に迷惑がかかるからだそうです。しかし、学生は家より図書館で勉強したほうが便利な場合もあります。以前のように学生が自由に勉強できるようにするには、どんな働きかけをすればよいでしょう。

【回答】
 市の図書館は住民の教育や文化において、その福祉に貢献する施設で、地方自治法第244条1項の「公の施設」となります。

 同法2項は「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」と定め、3項では不当な差別的取り扱いを禁止しています。勉強禁止は勉強目的の利用禁止ですが、長時間占拠で他の利用者に迷惑をかけることが、禁止の正当な理由になるかの問題です。

 結局は程度問題で公の施設の利用は住民の権利であり、行政の裁量の幅は大きくありません。満員の場合は、一定時間以上の利用制限など合理的かつ客観的な基準を定め、大きな裁量を認めない扱いが必要だと思います。

 図書館の対応を元へ戻させる方法ですが、社会運動を別にし、法的な手続きとしては、まず市長への審査請求が考えられます。図書館の利用禁止は、公権力の行使に当たるので、行政不服審査の対象になり、地方自治法は公の施設の利用権に関する処分について、自治体の長への審査請求を認めています。

 市長は公の施設の利用権に関する審査請求があった場合には、議会に諮問して、その意見を聞いて裁決します。そこで議員への働きかけも重要となります。

 それとは別に、行政訴訟を起こすことも検討できます。しかし、不服審査は公権力行使の不当性を問題にできますが、行政訴訟では違法性の有無を審理するため、ハードルは高くなります。また、ある時1回だけの禁止だと不服審査でも行政裁判でも申し立てる時には終わっているので却下されます。

 ですが、その場合でも図書館側の対応で、人前で恥をかかされたなどの事情があり、図書館の対応が恣意的で不合理で、違法性があると立証することができれば、国家賠償法に基づき、慰謝料請求も可能だと思います。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年7月15日号

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