日本の世帯別年収の平均は529万円だが、年収1000万円以上の世帯も全国で約1割(2014年「国民生活基礎調査」)に達する。その「お金持ち」世帯が多く住むエリアを調べると、意外にも偏在しているのは北陸地方。北陸エリア1位の富山県小矢部市(年収1000万円以上の世帯の割合11%)は「文化」と「伝統」がお金持ちの秘密だ。
「もともと、富山県は3世代同居が“文化”という土地柄です。なかでも小矢部市は3世代同居率が3割を超えて県内トップで、1世帯人員が県内2番目に多い(3.18人)。働き手の多さが高い世帯収入につながると考えられます」(小矢部市企画政策課)
加えて「女性の働きやすさ」も影響していそうだ。
「富山県は昔から住まいと勤務先が近いのですが、とくに小矢部市は石川県との県境にあり、金沢市や富山市も通勤圏内で共働き夫婦が多い。市内には北陸初のアウトレットモールができて雇用も増えています。
子育て施設も充実し、5歳未満の保育所入所は9割を超え、医療費は中学生まで無料です。一家が働きやすく、住みやすい生活環境が世帯収入を押し上げていると考えられます」(同前)
子育てをする母親が働きやすい環境が整えば、雇用が増えて家計が潤う。小矢部市は、安倍内閣が推進する「女性が活躍する社会」のモデルケースである。
お隣の福井県あわら市(同9%)も同様だ。
「市内に芦原温泉があり、米どころでもあるが、お金持ちが多い実感はありません。ここは結婚した長男夫婦が跡取りとして実家に住む土地柄です。祖父母が畑仕事をして子供世代、孫世代が外で働くので、世帯収入が増えるのでしょう」(あわら市政策課)
※SAPIO2016年8月号