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親会社が支払いを滞らせる時の対処法 弁護士の見解

 下請けの立場で商売をしていると、親会社から不条理な仕打ちを受けることはままあることだ。親会社がしばしば支払いを滞らせるような場合、どのように対処すれば良いのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 町工場を経営しています。以前からの悩みなのですが、親会社の支払いが滞ってばかりなのです。平気で半年くらいは遅れます。このままでは工場を維持するのも難しく、このような場合、先方の会社にどのような行動を取ればよいのでしょうか。正直なところ、怒らせて発注が来なくなるのも辛いのですが。

【回答】
 下請代金支払遅延等防止法は、取引上強い立場にある親事業者と下請事業者との下請取引の公正化をはかり、下請事業者の利益を保護する法律です。この法律は親事業者に対し、発注時点での代金額や支払期日など、一定の事項を定めた書面を交付し、代金支払いを注文品受け取りから、60日以内にするように義務付けています。

 さらに親事業者が支払いを遅らせたり、下請事業者に納期遅れなどの責任がないのに代金を値引く等の行為を禁じ、違反の疑いがあれば報告を求め、違反に対しては是正措置の勧告をします。また、公取委に通報した下請事業者との取引を停止するなどの不利益な扱いをすることも禁止行為です。

 公取委の勧告に従わないと課徴金が課されます。ただし、この法律の適用は下請事業者と親事業者の資本金の金額が一定の関係にあることが前提です。

 製造委託の下請取引では、親事業者の資本金が3億円超の場合は、資本金3億円以下の下請事業者と、親事業者の資本金が1000万円超3億円以下の場合は、1000万円以下の下請事業者が保護されます。個人営業の下請事業者は、親事業者の資本金が1000万円以上であれば保護されます。

 この前提条件がない場合でも、相手会社が取引上の地位が優越していることを利用し、正常な商慣習に照らしても不当な不利益を押し付けていることもあります。これは独禁法が禁止している優越的地位を濫用した不公正な取引方法に当たります。この場合、公取委に申告し、不当な扱いの排除を期待することが考えられます。

 公取委は申告者が望まない場合、他人に名前がわからないよう守秘義務を負うことになっています。いずれにせよ、公取委に相談されるのを勧めます。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年8月12日号

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