ビジネス

目で涼をとる「京うちわ」 飾り道具付きで10万8000円

京うちわ阿以波の特大型うちわ『清流』(飾り道具付き10万8000円)

 夏に涼を呼ぶうちわ。香川の丸亀、千葉の房州などが産地として有名だが、その多くは、竹に切り込みを入れて骨組みを作り、柄と扇面が一体になっている。だが「京うちわ」は、作り方がこれらとは異なる。

「京うちわの特徴は、持ち手と扇面を別々に制作する、“差し柄”構造です。宮廷で用いられた“御所うちわ”がルーツで、柄は漆に金彩を施すなど、装飾性が高く、優美なものが多いのです」

 そう言うのは、元禄2年(1689年)創業の「阿以波」(京都市)の10代目で、現当主の饗庭(あいば)長兵衛さんだ。なかでも、写真のように竹骨が透けて見え、扇面いっぱいに繊細な切り絵細工が施された「透かしうちわ」は、飾って楽しむ雅な芸術品として、国内外からの評価も高い。

「このうちわは、風を起こすためではなく、“目で涼をとる”ことをコンセプトに、先代の9代目当主が考案したものです」(饗庭さん、以下「」内同)

 昔から扇面が部分的に透けるデザインのうちわはあったが、全面的に透かし模様の入ったものはなかった。この『阿以波』が作るのは、完全な“両透かし”模様。絵柄部分にのみ紙を貼るという、繊細な作業を行うため、職人の高い技術が必要で、制作には数週間もかかるという。絵柄には、透かし柄をアクセントにしたものや、裏面は全面に紙を貼り、表面のみ切り絵を貼る“片透かし”などがある。

「うちわに紙を貼った後、ヘラで骨の際に筋をつけます。このひと手間をきっちり行うことで、うちわ全体がしっかりするんです」

 竹は丹波の4~5年もの、紙は越中八尾の手漉き楮紙、柄には栂や杉材を使用するなど、材料は国内産にこだわっている。夏だけでなく、四季折々の絵柄があり、生花や掛け軸など季節を演出するインテリアとして楽しむ人も多い。

※女性セブン2016年8月18・25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン