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歯科矯正 永久歯が生え揃った12才以降でも充分間に合う

歯科矯正は不必要な早期治療も多い

 かつて、歯科矯正は子供のうちにできるだけ早く始めたほうがいいという考え方が浸透していた。

 しかし昨今では、専門家の多くが異論を唱える。『後悔しない歯科矯正』(小学館101新書)の著者で、医療ジャーナリストの増田美加さんは言う。

「乳歯は6才前後で抜け出し、12、13才ですべて永久歯に生えそろいます。歯並びは成長に応じて変化もしていきますから、乳歯が混在する年齢で歯並びを調整しても、また変化が起きてしまう可能性が高いのです」(増田さん)

 今年9月、歯科矯正初の診療ガイドラインを日本歯科矯正専門医学会(JSO)が発表。そのガイドライン作成に携わったおおの矯正歯科(長野県上田市)院長の大野秀徳さんはこう話す。

「受け口など機能的な問題がある場合なら、子供時代の早期矯正が有効な場合もあるものの、子供の矯正時期について早く始めれば早く終わるという意見に根拠がなく、むしろ不必要な早期治療が多く行われているのが現状です。

 今回発表した上の前歯が出ている小児(7~11才)のための矯正治療ガイドラインでは、出っ歯の子供は早期の矯正治療を行わないことを強く推奨するという内容になりました」(大野さん)

 乳歯と永久歯が混合して生えている時期に出っ歯の矯正をしても、またすべてが永久歯に生え変わった際に再治療しなければならず、すべての永久歯が生えそろった12才頃以降、さらには大人になってスタートしても、充分間に合うというのだ。では、何才まで歯の矯正は可能なのか。

「歯と歯周組織さえ健康なら、歯は年齢に関係なく動かせます。ただ、若年者にくらべ骨の再生機能が衰える中高年では、矯正度合いによって、誰でも矯正治療可能とは限りません」(大野さん)

 健康という条件を満たせば、何才になっても歯科矯正できるわけだが、そもそも歯科矯正はどのようにして行われるのだろう。それには、ヒトの歯が持つ、とてもよくできた“破壊と再生のメカニズム”がかかわっている。

 矯正器具で歯に力をかけると、歯と骨を結ぶ歯し根こん膜まくが伸び縮みし、圧迫されて縮んだ側には骨を溶かす破は骨こつ細胞と呼ばれる細胞が現れて骨が浸食され、逆に伸びた側には骨こつ芽が細胞が出現して新しい骨が作られる。こうした現象を体の摂理と新陳代謝に合わせ、1か月に1mm程度のペースで、土台の骨の形状から変えていくのが、歯を動かすしくみだ。

「ただし、虫歯や歯周病がある場合は歯科矯正が難しい。その状態の可否も含めて、専門医への相談が不可欠です」(星歯科矯正院長・星隆夫さん)

※女性セブン2016年11月17日号

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