かつては「マンション=ペット禁止」が当たり前だったが、ライフスタイルの変化とともにペットOKの物件も登場。時代の流れはペット好きに追い風だ。これまでペットNGだったマンションでペット飼育が容認された場合、アレルギーがある住民はどうすれば良いのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
分譲マンション購入半年後に住民会議が行なわれ、長年の議題だったらしいペットの飼育の容認が3分の2の賛成多数で可決。しかし、私たち家族は動物の毛のアレルギーがあり、受け入れたくありません。今の状況では引っ越しも難しく、このような場合、どのような手段を取ればよいのでしょうか。
【回答】
建物区分所有法30条では、建物や敷地などの管理や使用について、管理規約で決めることができるとされ、31条でこの管理規約が集会で区分所有者の頭数と各戸の床面積の広さで決まる議決権数の両方ともに4分の3以上の賛成を得ることで変更できるとされています。
しかし、31条には「この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定められています。この特別の影響とは何かですが、最高裁は規約の設定、変更等の必要性及び合理性と、これによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、不利益が受忍限度を超える場合をいうとしています。
例えば、専用使用の駐車場の料金増額について、社会通念上相当な額であれば変更できるとした例や、専用の庭の使用権を消滅させて駐輪場を作るという決議を無効としたり、事情によりさまざまです。ほかにも、休館日があるリゾートマンションで定住型の継続利用を禁止する変更を認めた裁判例もあります。
質問者のペットアレルギーによる不安はもっともで、住民の健康問題に直結します。他方、高齢化に向けて伴侶動物としてのペットを求める声も大きいのでしょう。そこで、環境や健康にも配慮した適切な飼育方法を条件とした変更であれば、受け入れざるをえないと思います。
ただ、マンションがペット禁止による健康的な生活環境を謳い文句に分譲されたとすると、住民はそれを承知で購入したのですから、あるいは受忍限度を超えるといえるかもしれません。
なお、前記の通り管理規約の変更には4分の3が必要で、この要件は規約などでは緩和できません。そこでもし、本変更が3分の2で決議されたなら無効となります。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2016年12月2日号