今日はバレンタインデー。元宝塚歌劇団花組トップスターの女優・真矢ミキが、中学時代のバレンタインデーの淡い恋を振り返る。
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この季節、デパ地下のチョコレート売り場に列をなす女性たちを見るたび、私は彼女たちに問いたい衝動に駆られる。
「そのチョコの値段に見合う思いをしていますか!?」と。
かつてバレンタインデーのチョコに“義理”はなかった。あげるほうも、もらうほうも、“本気”、そう“超本気”だった。
もちろんチョコレートは一人の人にだ。一人の男性の心 臓めがけてパシッ! パシーッ! と一投入魂。さしずめ私はマウンドに立つピッチャーだ。もちろん球は悩みに悩んで奮発したチョコレート球、バッテリーは親友の女の子といったと ころだろうか。時に、“その人へのアプローチ違う!”とばかりに首を横に振ってサインを送ってくる。
そう、とにかく1年待ちましたと言っても過言ではないほど女性が恋に全力投球し、唯一告白しちゃう日、それが2月14日だったのだ。
私が初めてそんなピッチャーマウンドに立ったのは中学3年生のとき…(遠い目)。私は3組、彼は15 組。同学年といってもクラスがこんなに離れていては顔を合わせる機会もなかったわけですが、林間学校でたまたま民宿が隣同士で2階のベランダから、すごく長く目が合ったのですよ。…キュンとしてしまいました。コテンと参ってしまいました。真矢ミキ、初恋です。
初恋の君はサッカー部で、私はボールを蹴る彼の姿を見たい一心で部活を何度も変えた。だって当時私が入っていたバトン部の練習場所は体育館の舞台上。これじゃサッカー部が見られないわけですよ。だからソフトボール部に入ってピッチャーをやらせてもらったんだけど(本当にピッチャーだった私…苦笑)、意識はすべて右側で練習しているサッカー部に向かっているから、どうしても投球が右にズレる。浮ついた心は チームワークにも影響する。
これじゃいかん!と次は個人で責任のとれる陸上部に移った。ハードルだ。しかしこちらも、初恋の君が目に入る至近距離で、ハードルをバンバン倒す、倒す。すさまじい音を立てて…。こんなポンコツな心では、恋のハードルも到底越えられないわけで…