ライフ

漂白された頭部と白髪ひげのドラえもんを画家が描いた意図

町田久美作『星霜』 (c)Kumi Machida (c)Fujiko-Pro

「あなたのドラえもんをつくってください」とのメッセージを受け取った28組のアーティストによる新作を集めた「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」。画家の町田久美さんによる絵画『星霜』は、和紙に墨で描かれた日本画。力強い輪郭線は超微細なドットと線の集積で、鼻のラインだけでも1~2週間かけている力作だ。町田さんが同作について語る。

 * * *
『ドラえもん』は『コロコロコミック』の創刊号(1977年)から読んでいて、横向きの顔は歴代の表紙デザインのひとつなんです。このむにっと輪郭からはみ出る唇のラインがたまらなく好きで、ここをしっかり描いてみたいと思ったのも、横顔を選んだ理由です。

 私より1年早く生まれたドラえもんは現代の子供たちにも変わらず愛され、きっとこの先の未来でも子供たちに愛されていく。そうした普遍的な存在への愛情を込めて、作品を『星霜』と名付けました。

 物語の世界でも、ドラえもんは人類が滅亡しても幾星霜を経て生き続けるでしょう。切ないような孤独を抱えながらもセンチメンタルな気持ちをグッと堪えて、時を凝視する──そんなドラえもんのイメージを横顔の佇まいで、長い歳月を生きた先の姿を漂白された頭部や“白髪”になったひげで表現しています。

 頭部には光沢のある白でつやつやのメカっぽい質感を出し、ひげには日本人の黒髪の色が抜けたような、黄みがかった白を入れました。ドラえもんを象徴するあのブルーや星霜を想起させるモチーフも密かにちりばめています。ぜひ近くに寄って、肉眼で作品に触れていただけたら嬉しく思います。

●まちだ・くみ/1970年、群馬県生まれ。画家。2005年より東京・西村画廊で個展。2008年、文化庁新進芸術家海外留学制度でデンマークへ。国内外で展覧会多数。2012年に『町田久美画集』(青幻舎)刊行。2016年より武蔵野美術大学造形学部油絵学科客員教授。

◆「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」は2018年1月8日まで、森アーツセンターギャラリーで開催(東京・六本木ヒルズ)。【開館時間】10~20時(火曜は17時まで)【休館】会期中無休。

※週刊ポスト2017年11月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
Instagramにはツーショットが投稿されていた
《女優・中山美穂さんが芸人の浜田雅功にアドバイス求めた理由》ドラマ『もしも願いが叶うなら』プロデューサーが見た「台本3ページ長セリフ」の緊迫
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
スポーツアナ時代の激闘の日々を振り返る(左から中井美穂アナ、関谷亜矢子アナ、安藤幸代アナ)
《中井美穂アナ×関谷亜矢子アナ×安藤幸代アナ》女性スポーツアナが振り返る“男性社会”での日々「素人っぽさがウケる時代」「カメラマンが私の頭を三脚代わりに…」
週刊ポスト
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン