国内

香田証生氏殺害は「市民見捨てた国家を国民が容認した瞬間」

平成史について語り合う佐藤優氏(左)と片山杜秀氏

 高支持率を保った小泉政権から第一次安倍政権へと至る、2003年(平成15年)~2007年(平成19年)。当時、改元から15年を経て日本人の精神性も大きく変容しようとしていた。作家の佐藤優氏と思想史研究家の片山杜秀氏が振り返る。

片山:2004年4月、日本人3人がイラクで武装勢力に誘拐されて、自衛隊撤退を要求される事件【※注1】が起きました。そこで巻き起こったのが「自己責任論」です。

 小泉政権下で国家が個人を守るという意識が希薄になり、レッセフェール自由放任主義的な方向に向かう社会を象徴する出来事だったように感じました。

【※注1/地元武装勢力が日本人3人を誘拐し、自衛隊撤退を要求。日本政府は拒否したが、宗教指導者の仲介で全員解放された】

佐藤:ただこの時点での「自己責任」には賛否両論がありました。福田康夫官房長官の「自己責任」発言に対しても批判が数多く寄せられていた。自己責任論で注目すべきは、その半年後の香田証生さん殺害事件です。

片山:イラクでバックパッカーの青年が殺された事件【※注2】でしたね。アルカイダ系の武装集団は、イラクでの自衛隊撤退を要求しました。

【※注2/2004年10月27日、「イラクの聖戦アルカイダ組織」を名乗るグループがネット上で香田証生さんを拉致したとする犯行声明を発表。48時間以内に自衛隊撤退に応じることを呼びかけたが、日本政府は要求を拒否。犯人グループは11月2日に、香田さんを星条旗の上で、斬首する動画を公開した】

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