中国の東北部、黒竜江省で、小学校を10歳で中退した64歳の農民が話題となっている。彼は独学で法律を学び、「農地を汚染・破壊された」などとして、大手国有企業傘下の石油化学企業を相手取って法廷闘争を挑み、一審判決で勝訴したのだ。企業側は控訴しており、この男性は現在も法廷に立ち続けている。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
この男性は王恩林さんで、企業との長い法廷闘争のきっかけは2001年の正月の朝のこと。王さんが家の外を見たところ、王さんらの農地周辺がすでに白く濁った汚水に覆われてしまっていたのだった。
王さんが隣近所の農民と共に慌てて外に出て見てみると、数百m離れたところにある工場から汚水が流れてきているのが分かった。
このため、村の55世帯の農民らと一緒に企業への抗議行動を始めたものの、会社側は「地元政府から汚水を農地に排出する許可をとってある」の一点張りでらちが明かない。春になってこれらの農地に種をまいても、芽も出ず、農産物の収穫はゼロの状態だった。
この企業は中国の3大国有企業の1つ、中国化工工業グループ傘下のチチハル化工集団で、石油精製や石油製品の製造を行っており、地元では大企業の一つ。国有企業だけに黒竜江省政府や王さんらの地元のチチハル市政府とは密接な関係にあり、王さんが市政府に陳情に行っても、まったく受け付けてもらえず、逆に追い返される始末。
王さんらは同年夏、裁判に訴えることにした。しかし、訴えるにしても、どうしてよいかもわからず、北京の非政府系団体(NPO)「環境汚染被害法律支援センター」に連絡して、手続きなどを問い合わせたほか、王さんは地元の書店で、法律関係の本を1冊と辞書を1冊買って勉強し始めた。このとき、王さんは48歳だった。