信州一の湖・諏訪湖や、八島湿原、下諏訪温泉、諏訪大社と、観光名所の多い下諏訪町。戦時中にカメラや時計などの精密機械の企業が疎開していたことから、多くの関連する企業が誕生。
戦後から高度経済成長期にかけて、精密産業の一大集積地として発展した。自然豊かで、冬でも晴天率が高く、精密機械産業が発展した場所であることがスイスと似ていることから、“東洋のスイス”と呼ばれるようになる。
オルゴールも、その中で発達したものの1つだが、『日本電産サンキョーオルゴール記念館 すわのね』館長の野田喜勇さんはその成り立ちをこう語る。
「日本電産サンキョーの前身、『三協精機』は1947年、GHQの依頼でオルゴールづくりを始めました。ところが、当初はなかなかうまくいかず、翌年の1948年6月に完成した試作1号はバケツの底を叩くような音だったそうです。その後、改良を加えて、同年の11月にはGHQから米軍兵士のクリスマス用品として200台を受注。そこから量産が始まりました」(野田さん・以下同)
当初は、全自動の生産ラインなどない時代。地域の人々が一丸となって手作業で作り上げていたという。
高度経済成長期にはおもちゃや生活雑貨の中にオルゴールが浸透し、生産量もうなぎ上りの状態で、全盛期の1980年代後半~1990年代には、年間1億個近くを出荷していた。
「1つでも多く生産できるように技術者たちが研究を重ね、オルゴール生産装置を開発。1985年には世界に類を見ない無人24時間操業のオルゴール生産工場も立ち上がり、自動で組み立てられるようになりました。30年以上たった今でも、日本で唯一のオルゴール一貫生産工場として稼働しています」
オルゴールには、ピアノの鍵盤のような働きをする“弁(振動板)”があり、この数によって音色の豊かさが変わる。弁の数が多ければ多いほど、音域が広がるのだ。
「弁の数は一般的に18~100まであり、実際に聴くと、音色の違いに驚きます。博物館の試聴室では音の聴き比べもできますので、実際に確かめていただきたいですね」
同館では、世界のアンティークオルゴールの試聴やオルゴールと映像を合わせたライブなども行っていて、その優しい音色に、多くの人が癒されている。
職人がオーダーメードで作る『オルフェウス』(写真参照)。72弁タイプは5万6570円。ちなみに、30弁タイプは約2万円~で、100弁タイプは36万円以上するそうだ。
※女性セブン2018年7月12日号