歯医者に何度通っても、虫歯は治るどころか再発し、挙げ句の果てには、「歯を全部抜いてしまいましょう」──密室の診療室で歯医者の言うことばかり聞いていたら、一生悔やむ事態になりかねない。100人以上の歯医者、歯科衛生士、歯科技工士に取材を重ねた岩澤倫彦氏が緊急レポートする──。
私は約10年前に、インプラント治療を受けた。入れ歯のように外れる不安もなく、自分の歯のようにしっかり噛めるので、食事もうまい。見た目も自然だ。
ただし、インプラントは歯科医の技術格差が大きく、選択を間違えると、深刻なトラブルが起きる場合もある。
まず、注意したいのが「格安・誇大広告」のクリニック。
数年前から、費用が1本10万円以下の格安インプラント・クリニックが台頭しているが、大半が「ワンピース型」と呼ばれるタイプを使用する。
インプラント治療はチタン製の人工歯根(フィクスチャー)を顎の骨に埋入させ、支台(アバットメント)を装着して人工歯を固定する。この基本タイプが「ツーピース型」と呼ばれ、一方で人工歯根と支台が一体化したものが「ワンピース型」だ。
インプラント治療に詳しい歯科医の小宮山彌太郎氏は「ワンピース型」のリスクをこう指摘する。
「ツーピース型なら、過大な力が加わった時に支台が安全弁として壊れ、人工歯根を守ることができます。一方のワンピース型は、周囲の骨に直接的に力が加わることで、その部分の骨が炎症を起こす場合があります。
ある認知症の患者は、口の中にワンピース型インプラントだけが残り、それが反対側の歯茎を突き刺して血みどろになっていました。簡単には外せないから、こういう悲劇が起きます。ツーピース型なら支台を外すだけで、問題を回避できます」
手術ミスによって深刻な後遺症が起きるケースもある。
大学病院など79施設を対象にした調査(調査を実施したのは、日本顎顔面インプラント学会・学術委員会)では、インプラント手術の重篤なトラブルが、3年間で421件。最も多い「神経損傷」は158件で、顔面の痺れ、疼痛によって、会話や食事が困難になるなど、深刻な後遺症が長期間続く。
また、インプラント治療にも女性が注意すべき点がある。
「最近、骨粗しょう症の治療で、『BP製剤』という薬を処方される女性が増えていますが、そういう人がインプラント治療を受けた際、まれに“顎骨壊死”(がっこつえし)が起きるケースが報告されています。インプラント治療前に主治医と歯科医が綿密に情報共有していれば、防げていた可能性もあります」(前出・小宮山氏)
顎骨壊死は、顎の骨が感染して崩壊する深刻な病態で、治療も難しく、患者は多大な苦痛を伴う。
インプラント治療を受ける医院は慎重に選ばないと、一生後悔する場合もあるのだ。
※女性セブン2018年8月23・30日号