浦和レッズの大槻毅監督と興梠慎三(時事通信フォト)

 ただ、当の浦和にしてみれば、ポジティブな要素ばかりではない。何といっても現在の浦和は、J1の残留争いに巻き込まれている。特にACLの決勝トーナメントが始まった8月27日以降は過密日程にも悩まされ、8試合で上積みした勝ち点はたったの6にとどまっている。

 しかも前節のアウェイ鹿島戦では、あろうことか大槻毅監督が鹿島MF永木亮太を片手で突き倒して退場処分となっている。確かに、自らの眼前でMFエヴェルトンと激しく競り合った永木のプレーに熱くなり、選手を守ろうとする側面はあったのかもしれない。サポーターの中には、「組長がやってくれた!」と胸のすくような思いを抱いた者もいただろう。

 だが、スポーツの場での暴力は絶対に許されるものではない。どんな事情があるにせよ、これを肯定してはサッカー自体が成り立たない。事の重大さは監督本人が一番自覚したのだろう。試合の翌日にはクラブからの処分(制裁金100万円)の発表と共に、行為を詫びて両チームの関係者に謝罪を表明している。

 当然だろう。クラブの理念として青少年の健全育成への寄与を掲げ、「異なった意見や価値観であっても、まず相手の意見を受け入れ、互いを理解しようとするオープンマインドを持てるよう努めます」(浦和レッズの行動規範より)と表明しているクラブで、指揮官が相手選手に手を出すというのは、暴挙以外の何物でもない。このことは胸に刻んでおきたい。

 結局、サポーターに強い印象を残した鹿島戦も川崎戦も勝ち点は1つも獲得できなかった。J2降格も絵空事ではなくなった。しかし、この2試合で得たものも確実にあるはずだ。お互いをリスペクトした選手、サポーターの振る舞い。そして、Jリーグ代表としての自覚と矜持だ。それらを背中に感じながら、彼らはアウェイの地に向かった。

 もちろん、チームにとっては帰国してからの残り2戦がJ1残留の運命を握る状況に変わりはない。

 しかし、ここはひとまず目の前のACLにフォーカスして、とにかく勝ち点なりアウェイゴールなりを持ち帰ってきてほしい。エースの興梠慎三はサポーターに向けてこんな言葉を発した。

「簡単に勝てる相手ではないのは全員がわかっていますが、チーム一丸となって歯を食いしばって戦ってきます」

 数々の試練を乗り越えて、3度目のアジア王者を目指す。

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