ライフ

卒業式は人間関係をチャラにできる素晴らしいイベント

卒業式の思い出は人それぞれ(写真はイメージ)

 時事ネタやネットの出来事を日々つぶやき、著書に『立て板に泥水』『深爪流~役に立ちそうで立たない少し役に立つ話』(ともにKADOKAWA)がある、主婦の深爪さん(@fukazume_taro)による、本誌・女性セブンの隔週連載コラム「立て板に泥水」が最終回を迎えた。深爪さんが卒業式を振り返る。

 * * *
 卒業式で泣いたことがない。私は泣かないどころかうれしくて仕方がなかった。

 友や恩師との別れを惜しみ、抱き合って涙を流す同級生を横目に、私は「ようやくこの集団から解放される」とニヤニヤが止まらなかった。

 私にとって卒業式は、「リセットの儀式」だった。人間関係をすべてチャラにできる最高のイベントだったのだ。

 *
 ずっと「学校」になじめなかった。「みんななかよく」ができなかったせいかもしれない。休み時間には机に突っ伏して寝たふりをしたり、手のひらに現れる妖精さんと会話をしたりしてやり過ごした私にとって、「みんななかよく」を前提とした学校の空気が心底苦手だった。群れをなしてトイレに行く女子を見て「なぜ、小便くらいひとりでできないのか」と思うような人間だったので、とにかく友達ができない。

 気がつくと、いつもひとりだ。先生の「好きな人同士でグループを作って~」という言葉はもはや死の宣告である。あの孤独感を味わいたくないがために、遠足の班決めのときに学校を休んだこともあった。近年、不登校児の増加が問題になっているが、とりあえず教師による「好きな人同士でグループ作って~」という呼びかけを禁止するところから始めるべきだと思う。

 このように、小中高といわゆる“陰キャ”として過ごしてきた私だが、生まれ変わったら絶対に“パリピ”になりたい。休み時間には会話の中心となってワイワイ盛り上がりたいし、「好きな人同士でグループ作って~」と先生に言われれば、引く手あまたになるような人間になりたい。そして、来世では卒業式で同級生と抱き合いながら号泣できるよう、日々徳を積んでいきたいと思っている。

 ところで、突然だが、今回をもって『立て板に泥水』を卒業することになった。先に述べたように、私にとって「卒業」はリセットの儀式であり、非常に清々しい気持ちになるはずのものだが、今回は違う。正直、とてもさびしい。『立て板に泥水』のネタを考えることが、いつの間にか私の生活の一部になっていたからだと思う。「明日からもうお弁当は作らなくていいよ」とわが子に言われたような、そんなものさびしさがあるのだ。

 連載のお話をいただいたとき、「2週間に1度のコラムなら」と気楽にオファーを受けてしまったが、実際に執筆を始めると、時に後悔が頭をよぎるほど大変な作業だった。私の周りだけ時間の進みが早くなったのでは?と思えるほど、すぐに締め切りがきてしまう。

 それでも自分の書いた文章が誌面に掲載されると、うれしくてなんとも誇らしい気持ちになった。モノカキに憧れ、「いつか雑誌で連載を持ちたい」という夢を持っていた身としては感無量だ。私にこの素晴らしい機会を与えてくださった小学館さま、担当のSさんとSさん、そしておつきあいいただいた読者のみなさまには感謝の気持ちでいっぱいである。3年間、本当に本当にありがとうございました。またいつかどこかで。

深爪

※女性セブン2020年3月26日・4月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
1980年にフジテレビに入社した山村美智さんが新人時代を振り返る
元フジテレビ・山村美智さんが振り返る新人アナウンサー社員時代 「雨」と「飴」の発音で苦労、同期には黒岩祐治・神奈川県知事も
週刊ポスト
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
女性セブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
タイトルを狙うライバルたちが続々登場(共同通信社)
藤井聡太八冠に闘志を燃やす同世代棋士たちの包囲網 「大泣きさせた因縁の同級生」「宣戦布告した最年少プロ棋士」…“逆襲”に沸く将棋界
女性セブン