「自分なんかが優勝していいんでしょうか」──国技館の観衆を爆笑させた幕尻優勝インタビューから3か月。徳勝龍(33)は最も“新型コロナを恨んでいる力士”かもしれない。初場所では西前頭17枚目ながら、14勝1敗の成績で優勝。20年ぶりの幕尻優勝となり、話題性抜群の優勝力士としてご当地場所(奈良出身)となる3月場所を迎える予定だったが──。
「場所前に奈良市内で凱旋パレートが催されたが、観客の密集を避けるために距離が短縮されるなど規模は縮小。花束贈呈なども取りやめになった」(地元記者)
西前頭2枚目まで番付を上げて迎えた3月場所は無観客開催となり、地元なのに声援はゼロ。その影響があってか、4勝11敗と大きく負け越し、5月場所では西前頭7枚目まで番付を落とすことに。
「3月場所後に予定されていた春巡業も中止となった。巡業先には地元の奈良県桜井市も含まれていただけに、まさに踏んだり蹴ったりです」(同前)
しかも、5月場所でまたも大きく負け越すようであれば、十両陥落危機の可能性すらある。高田川親方(元関脇・安芸乃島)や弟子の十両・白鷹山の新型コロナ感染が発覚し、5月場所の開催自体が危ぶまれている状況とはいえ、もともと幕内と十両を行き来する「エレベーター力士」だった徳勝龍にとって、次の十両落ちは“将来設計”を左右する。
「不祥事の廃業以外、平幕優勝して年寄(親方)になれなかった力士はいない。年寄を襲名できるかは現役時代の実績が影響するが、それだけ優勝は重いということ。ただ旭天鵬(現・友綱親方)、琴錦(現・朝日山親方)ら、ほとんどが平幕優勝後に三役に定着していた一方、徳勝龍の最高位は先場所の前頭2枚目。33歳という年齢を考えると、このまま十両陥落なら引退という筋書きも現実味を帯びてくるが、その場合、“年寄になれない史上初の平幕優勝力士”になるかもしれない」(協会関係者)
徳俵の徳勝龍。再び“上昇ボタン”を押せるか。
※週刊ポスト2020年5月8・15日号