売り切れた空の棚を見ると人間は飢餓感が刺激される。そうなると、メルカリなどで不当に高値で販売するヤツら−−いわゆる”転売ヤー”の出番である。通常200円台で売られているホットケーキミックスやベーキングパウダーが1000円以上の値づけで出品されたりもしている。
こうした小麦粉製品の高値販売について、記者会見で聞かれた江藤拓農林水産大臣は「極めてけしからん」と憤った。確かに「けしからん」のだろうし、憤りたくなる気持ちもわからないでもない。
だがこの発言のあった日、スーパー店頭には小麦粉はあった。ホットケーキミックスも銘柄によっては少しずつ棚に戻ってきている。ベーキングパウダーはいまだ戻ってきていなかったが、早晩戻るだろうし、実際この会見でも「屋内の製粉メーカーの工場はフル稼働している」「そもそも不足もしていない」とコメントしている。
現在の小麦粉不足は一時的なものであり、品物が店頭に戻ってくれば価格は自動的に正常に戻り、法外に高額なホットケーキミックスが見向きもされなくなる。
そんなことは農水相も百も承知のはずだ。いま生産物の価格の下落が深刻な問題となっている。飲食店がのれんをかかげられないため、本来飲食店に納められるはずの生産物が行き場を失ってしまっているのだ。4月の牛枝肉の卸売価格は対前年比で3~4割下がり、豊洲市場のマグロの卸売価格は前年比7割近くも下落した。
ちょっとTwitterを覗けば「みんな、そんなにホットケーキ好きだったっけ?」「ベーキングパウダーなんて、重曹とクエン酸で作れるじゃん」という声がずらずらと出てくる。豊洲市場の鮮魚や青果を扱う「豊洲市場ドットコム」ではお値頃産品の宅配が好評を博している。
「極めてけしからん」と感情に身を任せる前に、生産物の流通に考えを巡らせ、ぜひ妙案をひねり出していただきたい。