育ちのよさとはいったいなんだろう? 『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)の著者で、皇室やVIPなど、本物の“良家”の人々のアテンダントを務めてきた、マナースクール「ライビウム」代表の諏内えみさんは育った家庭環境は関係ないという。
「“育ちのよさ”は、生まれ育った家の裕福さや受けてきた教育とは関係ありません。“育ち”とは、そのかたのちょっとした身のこなしや言葉遣いに表れる、印象やたたずまいのこと。今日までの生き方が表れます。過去の積み重ねよりも、これからの日々の過ごし方で、何才からでも身につけられるのです」(諏内さん・以下同)
いつでも一定のマナーやルールに従うのではなく、その都度相手の気持ちを考えて柔軟に行動できるのが、本当の“育ちのよさ”だ。
マナー本に書いてあるような“しきたり”は、相手への思いやりを表現する選択肢の1つ。知っておくことで自信につながるが、それだけに縛られるべきではない。
「たとえば、ビジネスなら5分前行動が鉄則ですが、お友達などのお家にお呼ばれしたのであれば、予定時間より5~10分遅れた方が、相手のかたは心に余裕を持ってお迎えできることが多いはず。
“お家におじゃましたのだから”と台所などの片づけを買って出るのも、強引にすると相手を困らせます。台所に立ち入られたくないかたもいらっしゃいますし、かえって気を使わせますから」
かといって、すべて相手に“丸投げ”するのは、間違った気遣い方だ。食事や買い物で「どこに行きたい?」「何が食べたい?」と聞かれて「なんでもいいわ」と答えるのは、自分の意見がない人だと思われかねない。
「“あまりお腹が空いていないから、軽くお茶できるところはどう?”“最近、駅前に新しいお店ができたみたいよ”と、自分の意見を提示しながら、相手の考えもうかがうような答え方がベストです」
ご近所づきあいや職場では、たびたび返答に困ることもあるかもしれない。そんなときこそ、相手を気遣い、立てることが大切だ。
「日本では謙遜が美徳とされていますが、褒めていただいたときに“そんなことありません!”と自分を卑下するのは、せっかく褒めてくださったかたに失礼というもの。育ちのよさは“素直さ”でもあります。“褒めていただいて励みになります”“そんなふうに言っていただけたのは初めてです”などと、うれしさと一緒に相手へのリスペクトも表現しましょう」