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2020.08.26 07:00  NEWSポストセブン

全米を熱狂させるトランプ大統領「影の首席補佐官」の話術

全米一の人気者・ハニティ氏(AFP=時事)

 日本でも、安倍晋三首相に批判的な朝日新聞や毎日新聞などリベラル系メディアと、応援団のような報道が目立つ産経新聞、読売新聞、NHKなどの保守系メディアの違いが注目されているが、アメリカのメディアはもっと極端に左右に割れている。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、アメリカでは超有名な「トランプ大統領の盟友」を紹介する。

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 この男、ニュース番組の途中でカメラに目線を送ると、「それではホワイトハウスに電話を入れてみます」と平気で言う。スタジオから電話をかけると、本当にトランプ大統領が電話に出てくる。アメリカ大統領が、こんなに簡単にテレビの生インタビューに応じている光景は、かつて目にしたことがない。

 しかも、この男の話し方は大統領に対するものには聞こえない。まるで友達と会話しているようだ。緊張感もなければ、儀礼的な言葉使いもない。他のインタビュアーが必ず使う「ミスタープレジデント」という呼び方も彼は使わない。トランプ氏のほうも、好きなことを好きなように話す。そして、すぐに激しい口調になる。お互い熱を帯びてくると、同僚同士がレストランで政治談議をしているようだ。それほど気が合っているのである。

 この男こそ、「トランプチャンネル」とか「共和党テレビ」などと揶揄されるFoxニュースのアンカーマン、ショーン・ハニティ氏である。極端な右寄りの言動で知られるが、筆者はそんな言葉では足りないと思う。言うなれば「左殺し」である。左派攻撃では一切手加減せず、相手が黙るまで徹底的に論難する。最後はボクサーがサンドバッグを好きに叩いているような光景になる。

 ハニティ氏の「武勇伝」は数多くあるが、古くはクリントン氏が大統領だった1990年代に起きたホワイトウォーター疑惑(クリントン夫妻が関わったとされる不正な不動産投資事件。結局、大騒ぎの末に何も証拠は出てこなかった)で、夫妻の顧問弁護士が自殺したことを「クリントン夫妻が殺した」などと強い言葉で非難して物議をかもした。前回の大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン候補が演説の際に檀上がよろめいたことに目を付け、「彼女はパーキンソン病だ」と発言して陣営を苦しめた。さらに、2012年に起きたベンガジでのアメリカ大使館襲撃テロについて、国務長官だったヒラリー氏は事前に情報を得ていながら大使館員を見殺しにしたと批判した。いずれも、それを裏付ける証拠はない。

 ハニティ氏はFOXの看板スターで、その地位は確固たるものである。視聴率は、すべてのケーブルニュース番組でナンバーワン。さらに、全国のラジオに毎日のように出演し、右寄りの思想を広めている。そのエネルギーには敬服するし、彼の年収は何億ドルにも達すると推定されている。筆者も彼のニュースショーをよく見るが、ナレーションのうまさ、印象に残る独特のツッコミ方、証拠の乏しい(あるいはまったくない)話をまことしやかに構成する能力、正義感を醸し出す熱弁、どれをとっても超一流で、生まれつきの論客だ。その魔術にかかると、何が真実で何が正義か、いつの間にかわからなくなってしまう。

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