ライフ

衝撃のコミック『消えたママ友』描く 胸に刺さるママの本音

野原広子さんママ友を題材としたコミックを上梓した

【著者に訊け】野原広子さん/『消えたママ友』/KADOKAWA/1100円

【本の内容】
 保育園のママ友4人のうち1人が、ある日、子供を置いていなくなってしまう。友達だと思っていたのに理由も知らされず、連絡も来ない状況に、残された3人は自分たちの関係は何だったのかと考え始める。一人ひとりの視点から本音と事情が丁寧に描かれていく。ママ友はなぜ消えたのか? 意外な結末が待ち受ける衝撃のコミック。

 仲良しママ友4人グループの1人が突然、姿を消してしまう。冒頭から不穏な空気が漂う、ミステリー仕立てのコミックだ。

 ママ友は距離の取り方がむずかしい。子育ての悩みを共有できて心強い存在である一方、いやでも子供のために付き合わないといけないこともある。家庭によって経済力、夫や姑の協力度が違うから、ライバル心や妬みも生まれる。

「一歩間違うと事件が起きたりしちゃう微妙な間柄ですよね。私自身、子供の幼稚園の送り迎えがなくなったときは、なぜかホッとしました。失敗が許されない緊張感があるんですよ」

 失踪したママを心配しつつも、残された3人は自分たちはうわべだけの友達だったのではないかという疑念にかられ、ママ友の輪はほころび始める。

 それぞれの家庭の事情、ママの本音は普段は隠されていて見えない。消えたママにはやさしそうな夫と育児に協力的な義母がいて、仕事もしていた。キラキラ輝いて見えたのに、実は深い闇の中にいたのだった。野原さんは、どんな問題を抱えていても、事件を起こしたり、子供と無理心中したりする前に、何もかも捨てて逃げてほしいという。

 2年前に離婚したとき、周りの何人もの人から「離婚できていいね」「私もしたかったけどできなかった」と言われた。ギリギリまで追い詰められても、さまざまな事情から踏み切れない人が大勢いることを実感したという。

「いざとなったら逃げていいんだよ、ということが頭の片隅に入っているだけで、随分違うと思うんです。逃げ出す勇気を持ってほしいですね」

 野原さんはこれまでにも離婚やママ友をテーマに自分の体験を織り交ぜた、曰く「モヤモヤシリーズ」を描いてきた。心の闇を描いているとやはり苦しくなる。思わず「モヤモヤはもういやだ」と娘に弱音を吐いたこともある。

「娘には、ワクワクして楽しい漫画は他の漫画家さんに任せて、お母さんはドロドロを一生懸命描きなさい、自分にできることをやりなさい、と言われました(苦笑)。それで私も目が覚めました」

 苦しさを超えて描き続けた甲斐あって、胸に突き刺さるママたちの本音が満載。結末まで一気に駆け抜けたくなるスリリングな作品だ。

●取材・構成/仲宇佐ゆり

【Profile】
野原広子さん●神奈川県生まれ。コミックエッセイプチ大賞受賞。出産を機にイラストレーターの仕事を始める。「レタスクラブ」に連載して大反響を巻き起こした『離婚してもいいですか? 翔子の場合』のほか、『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』『ママ、今日からパートに出ます! 15年ぶりの再就職コミックエッセイ』『娘が学校に行きません 親子で迷った198日間』などの作品がある。

※女性セブン2020年9月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の母・加代子さん(左)と妻・真美子さん(右)
《真美子さんの“スマホ機種”に注目》大谷翔平が信頼する新妻の「母・加代子さんと同じ金銭感覚」
NEWSポストセブン
トルコ国籍で日本で育ったクルド人、ハスギュル・アッバス被告(SNSより)
【女子中学生と12歳少女に性的暴行】「俺の女もヤられた。あいつだけは許さない…」 執行猶予判決後に再び少女への性犯罪で逮捕・公判中のクルド人・ハスギュル・アッバス被告(21)の蛮行の数々
NEWSポストセブン
二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(時事通信フォト)
【スクープ】二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏が年下30代女性と不倫旅行 直撃に「お付き合いさせていただいている」と認める
NEWSポストセブン
雅子さまにとっての新たな1年が始まった(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
《雅子さま、誕生日文書の遅延が常態化》“丁寧すぎる”姿勢が裏目に 混乱を放置している周囲の責任も
女性セブン
M-1王者であり、今春に2度目の上方漫才大賞を受賞したお笑いコンビ・笑い飯(撮影/山口京和)
【「笑い飯」インタビュー】2度目の上方漫才大賞は「一応、ねらってはいた」 西田幸治は50歳になり「歯が3本なくなりました」
NEWSポストセブン
司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン