マンハッタンにそびえるトランプタワーも砂上の楼閣だったのか(AA/時事通信フォト)

 トランプ氏のビジネスを調べていくと、返済期限のきた借入金を返していないことが明白だった。彼が使ったのは倒産戦略である。アメリカのビジネス界では、倒産は経営戦略の一つと捉えられている。実際に倒産しなくても、返済を迫られた時に「それなら倒産するぜ」と脅すと、多くの金融機関は貸し倒れを恐れて黙るのである。トランプ氏はそうした乱暴な戦略の常習者だった。

 筆者が疑っているのは、トランプ氏が大統領になってから、国税局(IRS)に圧力をかけ、トランプファミリー企業への追及を封じてきたのではないかということだ。もしそうなら、倫理的な問題ではなく刑事犯罪になりかねない。

 筆者はトランプ氏と同世代で、同じ時代にビジネス界で生きてきた。若い頃はベンチャーの時代で、ビジネススクールの友人たちは、次々とベンチャーで成功を収めた。筆者もその末席に加わることができて、なんとか今がある。ニューヨークで学生だった頃から、有名人であるトランプ氏のことは知っていた。ただし筆者の周りでは、彼はベンチャーとは認められていなかった。親のカネで好き勝手なことをしているだけ、というのがもっぱらの評価だった。筆者も彼のやることを批判的に見てきたし、それぞれの時代で彼のビジネスのうさん臭さはよく見て知っているのである。

 T氏をつかまえることができた。自分の才能と努力でのし上がった彼もまた、トランプ氏に批判的である。ちなみにT氏のハーバードでの専攻は税法だった。「トランプはベンチャーではない。親のカネと名声を利用してきた男だ。それも成功の一つではあるが、だから子供じみた考えをする。責任感が非常に薄い。金儲け一辺倒で独りよがりだ。社会貢献どころか、自分に投資する投資家の利益さえ考えていなかった。大統領としての腕も器もあるはずがない。彼を大統領に選んだのは、アメリカ国民の大きな失敗だった。我々の手で彼を落選させてやらなければならない。これ以上大統領でいると、さらに大きな問題を起こすだろう」。

 世界をかき回したトランプショーは、最終章でスキャンダルにまみれている。大統領職を退いても、疑惑は追及されるだろう。トランプ氏の落日が確実に近づいている。

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