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大前研一氏「マイナンバーカードは全く使い物にならない」

「マイナンバーカード」が厳しい評価にさらされる理由とは(イラスト/井川泰年)

「マイナンバーカード」が厳しい評価にさらされる理由とは(イラスト/井川泰年)

 マイナポイントの付与など様々な策を講じているが、身の回りにカードを取得したという人がなかなか増えない印象の「マイナンバーカード」。全国民が手にする予定のはずが、なぜ遅々として進まないのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、その根本的理由を問う。

 * * *
 菅義偉首相は「行政のデジタル化」を最優先課題と位置付け、各省庁に改革推進の大号令をかけている。

 わけても菅首相が躍起となっているのがマイナンバーカードの普及だ。2015年秋の導入以来、大宣伝を繰り返してきたものの、普及率はいまだに21.8%(11月1日時点)にとどまっている。そのため、所信表明演説(10月26日)で「今後2年半のうちにほぼ全国民に行き渡ることを目指し、来年3月から保険証とマイナンバーカードの一体化を始め、運転免許証のデジタル化も進めます」と普及策を強調。来年9月に設立予定の「デジタル庁」にマイナンバー関連の業務を集約して首相直轄の組織とし、「司令塔」の役割を担わせることも公表された。

 さらに、総務省は2022年度中にマイナンバーカード機能をスマートフォンに搭載することを目指すとし、平井卓也デジタル改革担当相はマイナンバーカードのセキュリティ向上のために現在の暗証番号に加えて顔認証などの生体認証を追加する「多要素化」を検討していると報じられた。

 しかし、たとえそれらの「改革」を実行したとしても、現状のマイナンバーカードのシステムは全く使い物にならないと思う。なぜなら、そもそもデータベースとしての基本的な要素を持っていないからである。

 マイナンバーの土台は、既存の住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)で、氏名・生年月日・性別・住所という住民票の4情報しか入っていない。つまり、世帯や家族、縁戚関係など個人を取り巻く親族が把握できるリレーショナルデータベースになっていないのだ。したがって、それを「マイナポータル」に集めてみたところで、世帯や家族を対象とした行政サービスには使えないのである。

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