バイデン氏とサンダース氏のコンビでは、トランプ氏に対抗するにはいかにも弱々しい(AFP=時事)

バイデン氏とサンダース氏のコンビでは、トランプ氏に対抗するにはいかにも弱々しい(AFP=時事)

 ビジネスの借金が減れば、トランプ氏の政治活動にも芽が出てくる。P氏によれば、トランプ氏は余った資金でネットメディアのベンチャーを買収する計画を進行中だという。もちろん政治活動を続行するためであり、得意のエンターテインメントで金儲けすることも忘れないはずだ。トランプ氏を熱烈に支持するトランパーズは大喜びして毎日見るだろう。

 トランプ氏の(真実ではないが)小気味いい弁舌は、今よりもっと多くのファンを獲得するかもしれない。これから分裂が進む民主党の右旋回する支持者を取り込むこともできる。バイデン政権で力を持つ社会主義者たちは、今のところ単なる富の分配を主張しているだけであり、「社会主義者とは、働かずに金が転がりこむことを望む人たち」と陰口を言われる始末である。要するに、貧困層も金持ちも意識の差は紙一重というのがアメリカなのだ。極端な左派を率いる民主党のサンダース氏は、「金を配る」と言っているから支持を集めているのであり、社会主義のイデオロギーが浸透しているわけではない。選挙戦ではトランプ・ファンの一部を奪うことに成功したが、今度はトランプ・チャンネルによってサンダース・ファンがトランパーに豹変するのもあっという間だろう。

 折しも、アメリカの保守派言論人の勢力図は大きく変わろうとしている。最右翼のラジオトークショーホストのラッシュ・リンボウ氏が重い肺がんのため番組を降りることになった。FOXニュースのトップホストであるショーン・ハニティ氏も下り坂である。保守系の人たちは、トランプ氏のメディア復帰を熱望している。「トランプ氏を支持すれば、あなたの金が1100%になる」と言えば、極左もトランパーズの行列に加わるかもしれない。AIで視聴者が望む言葉を分析し、トランプ氏がそれを政治番組とバラエティー・ショーで話し続ける。そんなトランプ・チャンネルがアメリカ世論を支配する近未来も絵空事ではない。アメリカはこれからも暮らしにくい時代が続きそうだ。

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