新型コロナウイルス感染拡大の影響で、音楽ライブやトークイベントなどはオンラインで配信されるのが当たり前になった。地方在住者からは、東京や大阪などにいるのと同じような頻度でイベントを楽しめることを喜ぶ声が多く、新型コロナが収束したとしても、オンラインイベントというカルチャーは持続しそうだ。
しかし、オンラインイベントというジャンルには、まだ課題が多く残っている。イベントの開催制限が緩和されてきた現在は、有観客+オンライン配信という形での開催が広がっているが、たとえば現地の観客と、オンラインの観客でチケット価格はどのように設定すべきなのか。
オンライン視聴の価格のほうが安価なのが一般的だが、会場に足を運んだ観客は、そのぶんの手間をかけてくれたとも言える。となると、現地鑑賞の付加価値をどのように付けていくべきなのか。イベント中に配信に乗せないパートを設けるというのもひとつの手だが、事情があって現地に行けない観客には、どうしても不満を感じさせてしまう施策だろう。
また、オンライン配信されている場合、特にトークイベントでは「ここだけの話」というのが難しくなる。リアルな会場だと、登壇者が観客を信頼して、「これからする話はSNSに書かないでください」と共犯関係を結べたとしても、これがオンラインイベントとなると、なかなか心理的なハードルは上がるのではないだろうか。配信動画から該当箇所が切り出されてSNS上で拡散されるリスクはゼロではない。
沖縄県那覇市にあるライブハウスG-shelterは、コロナ禍を受けて、撮影・配信の機能を強化したスタジオ型店舗へと方針を変えた。同ライブハウスを取り仕切る黒澤佳朗氏は、「撮影・配信にかかるコスト、専門家不足、著作権など、課題は本当にたくさんあります」と語る。
「特に重視しているのは、『ますます配信コンテンツが増えていく中で、どう差別化していくか』ということです。注力しているのは、観客とのインタラクティブ(双方向)な要素を増やし体験価値を高めることと、配信ならではの体験価値を見つけていくこと。そのニーズに対して、配信プラットフォーム側も進化が必要と感じています」(黒澤氏)