「歌舞伎町のホストクラブが危ない」と極めて局所的な話をしていた頃が遠い昔のようだ──。いまや全国津々浦々、あらゆる場所が新型コロナウイルスの「感染拡大地域」となっている。
しかし、地域によって、死亡者数や重症者数に大きな差があるのも事実。その背景には、自治体ごとの「対策」に差があるとも言われている。血液内科医の中村幸嗣さんはいう。
「日本は感染症の流行が少なく、感染症対応の経験がある医療従事者も少ないため、病院単独での準備は難しい面もある。それでもこの冬までに地域としてどういう対策をしてきたかが“結果”に表れています」
鳥取は平井伸治知事のリーダーシップのもとで「疑わしきは検査する」との方針を貫き、PCR検査が可能な数を人口当たり全国最多水準の1日約4800検体まで増やし、感染者全員がすぐ入院できるようにした。その対策により、中国5県で最も医療態勢が脆弱とされて高齢者も多い県ながら、死者ゼロを維持している(1月2日現在)。
鳥取と同じく死者ゼロの島根の取り組みも功を奏した。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんはいう。
「島根では高齢者施設でクラスターが発生しておらず、在宅療養者を出さない早めの対策が奏功していると考えられます。今後に向けての対策も進めており、今年7月には無症状者や軽症者を受け入れる宿泊療養のプレハブ施設を松江市内に建設する予定です」
中村さんは島根の“隔離政策”に着目する。
「島根大学の職員が仕事で東京に行って戻ってきたら、大学から14日間の隔離を命じられたそうです。過剰な反応ではありますが、ウイルスを持ち込ませない、感染させないために最も強力な対策は隔離なので、感染拡大地域を往来した人を隔離することは理にかなっています」
死者4人(1月2日現在)と健闘する長崎はどうか。
「感染初期に長崎大学熱帯医学研究所がクルーズ船『コスタ・アトランチカ』に対応し、その後も大学と自治体が同じ方向を向くことで感染拡大を抑え込んでいます。地方のため人口過密地域が小さいなど有利な面もありますが、大学と自治体がうまく連携すれば感染を抑えられるという好例です」(中村さん)
一石さんが注目するのは、栃木県の那須塩原市だ。
「近いうちに、希望する市民がPCR検査を1000円で受けられる事業を実施すると報じられました。原資となるのは、昨年12月に引き上げた入湯税の一部というユニークな取り組みです」
住民の命を守るリーダーが何をしているかに目を凝らす必要がありそうだ。
※女性セブン2021年1月21日号