国際情報

バイデン時代の幕開けを中国移民やトランパーはどう見たか

連帯を呼びかけたバイデン氏の就任演説だったが(AFP=時事)

連帯を呼びかけたバイデン氏の就任演説だったが(AFP=時事)

 バイデン新大統領が誕生したが、アメリカの分断は残った。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は、それでも就任式からアメリカの新時代を感じたとリポートする。

 * * *
 ジョー・バイデン新大統領の就任式が行われていたさなか、友人のピーターと電話で話した。「アメリカの自由と民主主義に祝福を」と筆者が言うと、ピーターは「まさにその通りだ」と答える。

 就任式を見ていてピーターに電話しようと思い立ったのには理由がある。ピーターは20年前、中国に孤児を引き取りに行った。そして、親の顔も知らない女の子を連れて帰った。それからピーターは、祖父と協力して男手だけで女の子を育てた。その娘は昨年大学を卒業し、今はコロナ危機と戦う医療機関で働いている。数学が得意で、職場でも人気者である。アジア人は数字に強い傾向があり、様々な職場で活躍している。しかしこの1年、トランプ大統領が「パンデミックは中国のせいだ」と責め立て続けたので、彼女をはじめ中国系の人たちは肩をすくめて生きてきた。本人にとってもピーターにとっても、この就任式は長く暗い時間からの解放を意味していたのである。

 就任式には、クリントン元大統領夫妻、ブッシュ元大統領夫妻、オバマ元大統領夫妻が参列した。会場から大きな拍手で迎えられる。この3組の元大統領夫妻が席に着くと気持ちが落ち着く。やっとアメリカが返ってきた、という安心感が湧いてくるのである。

 トランプ前大統領夫妻は、朝早くホワイトハウスを発ち、フロリダに向かう機中から退任の演説をした。4年間の大統領在任中、経済が史上最高の成長を見せたとか、不法移民が減ったといった内容で、相変わらず誇張と嘘が織り交ぜられていた。そして、「必ず帰って来る」と捨て台詞を残した。トランプ時代の終わりを実感した。

 とはいえ、見送りにはトランパー(熱狂的支持者)たちが大勢集まり、大歓声も起きた。これからもアメリカの政治と社会の分断は続くだろうと思うとうんざりする。

 就任式を見ているさなか、携帯にメッセージが入った。セオドア・ルーズベルト元大統領の子孫であるツイード・ルーズベルト氏からだった。筆者はルーズベルト元大統領の大ファンで、25年前から同氏の足跡を伝える団体のメンバーである。ツイードはその代表で、親友でもある。メッセージには、この新しい大統領の下に、右も左もなく、国民が一致結束し、団結してパンデミックに打ち勝ってアメリカを再生させよう、と書いてあった。彼もまた、就任式を見て胸を熱くしていたのだと思う。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン