ラグビー・スコットランド代表キャプテンとして、2019年のW杯で日本代表と戦ったグレイグ・レイドロー(35)が、今季からトップリーグに参戦。世界で活躍した大物は、なぜ新天地に日本を選んだのか。『国境を越えたスクラム』(中央公論新社刊)の著者・山川徹氏が、レイドローに聞いた。
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スコットランド代表を引退した私のなかに、こんな気持ちが湧き上がりました。私には新たなチャレンジが必要だ。新天地でもう一度、自分を試したい、と。
新天地に日本を選んだ理由はいくつかあります。
1つは、急成長する日本のラグビーを体感してみたかったこと。W杯でスコットランドは、日本に敗れました。代表引退を決めていた私にとっては、とても厳しい現実でした。悔しかったけれど、ラグビーというスポーツは、当日いいパフォーマンスをした方が勝つ。その点で、日本代表が優っていたのは紛れもない事実です。だからこそ、日本の勝利を心から賞賛できました。相手に対するリスペクトは、ラグビーというスポーツにとって、とても大切な価値観ですから。
実際に来日してみると、NTTコミュニケーションズは、本当に雰囲気のいいクラブでした。ラグビーのスタイルも日本代表に似ています。テンポ良く速い展開で攻めていく。そこでスクラムハーフに求められるのは、ラック(密集)に素早く寄って、攻撃のスピードをコントロールすること。とくに若い選手、同じポジションのスクラムハーフの選手たちには、私の経験やスキルを伝えていきたいと考えています。
日本を選んだもう1つの理由が、家族の存在です。W杯で日本滞在中、ファンやスタッフの方々から、おもてなしをしてもらいました。何よりも胸を打たれたのが、人々が尊重し合う日本社会のあり方です。ヨーロッパでは、そうした人間関係が失われつつある気がしています。助け合いの気持ちが根付く日本での暮らしは、幼い子どもたちにとっても貴重な経験になるはずと考えたのです。