芸能

美貌と新鮮さを備えた関根恵子 何故きわどい売り出し方をされた?

関根恵子デビュー作の『高校生ブルース』(画像は角川映画HPより)

関根恵子デビュー作の『高校生ブルース』(画像は角川映画HPより)

 数々の名女優が誕生した1970年代の映画界。とりわけ鮮烈な印象を残したのが関根恵子だ。彼女のデビュー作『高校生ブルース』(1970年)は、美子(関根)がクラスメイトの昇(内田喜郎)と体育倉庫で結ばれ、妊娠してしまう物語。映画評論家・映画監督の樋口尚文氏が関根の魅力を分析する。

 * * *
 70年代に青春を過ごした観客ならば「関根恵子」という響きには甘い疼痛を禁じ得ないだろう。1970年8月公開の『高校生ブルース』であまりにも鮮烈にデビューした関根恵子はまだ15歳であったが、劇中では裸になることを求められ、堕胎のために腹を蹴られ苦悶にあえぐという痛ましい場面もあった。

 こんな性と暴力の見せ場を、年端も行かぬ美少女に要求せねばならないほどに映画会社は不振の極みだった。折しも高度成長期の決算ともいうべき1970年万博が大盛況であったが、戦後の貧しき時代の娯楽の王者だった映画は多様化するレジャーの末席に転落していた。

 もしあれほどの美貌と新鮮さを備えた関根恵子がその10年前に大手映画会社からデビューしていたら、こんなきわどい売り方はされず、裸にならなかったに違いない。幾度か関根恵子にインタビューをしたが、当時この売り方に感じた強い違和感を回想していた。そのことに大いに共鳴しつつも、一方で倒産寸前の大映の寂寥感漂うスクリーンのなかで痛々しく裸身を晒す、美しすぎる少女には、そのきわどさゆえの抒情が湧き起こった。

 それは劇中の設定のみならず、現実の彼女の扱われ方の「虚実」の掛け算が生んだ「危うさ」のイメージで、まさにそれを活かして増村保造監督『遊び』のような傑作も生まれた。彼女の魅力にすがっていた大映の倒産後、東宝に活躍の場を移しても、関根恵子に「裸」はつきまとったのだが、70年代の彼女から立ち昇る「危うさ」の魅力は、まさにその「裸」(およびそれを求められる実像のイメージ)によって醸され、観る者をしたたかに疼かせていたとも言えよう。

【プロフィール】
樋口尚文(ひぐち・なおふみ)/1962年生まれ。映画評論家・映画監督。早稲田大学政治経済学部卒業。監督作に『インターミッション』『葬式の名人』。著書は『秋吉久美子 調書』(秋吉久美子との共著)ほか多数。『大島渚全映画秘蔵資料集成』が4月刊行予定。

※週刊ポスト2021年3月19・26日号

関連記事

トピックス

「鴨猟」と「鴨場接待」に臨まれた天皇皇后両陛下の長女・愛子さま
(2025年12月17日、撮影/JMPA)
《ハプニングに「愛子さまも鴨も可愛い」》愛子さま、親しみのあるチェックとダークブラウンのセットアップで各国大使らをもてなす
NEWSポストセブン
SKY-HIが文書で寄せた回答とは(BMSGの公式HPより)
〈SKY-HIこと日高光啓氏の回答全文〉「猛省しております」未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し、自身のバースデーライブ前夜にも24時過ぎに来宅促すメッセージ
週刊ポスト
人の出入りが多く流行っていたという火災があったサウナ店
《夫婦が閉じ込められ…》月額39万円の高級サウナ店での火災でサウナーたちに広がる不安 彼らはなぜ\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"避難シミュレーション\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"を議論するのか
NEWSポストセブン
今年2月に直腸がんが見つかり10ヶ月に及ぶ闘病生活を語ったラモス瑠偉氏
《直腸がんステージ3を初告白》ラモス瑠偉が明かす体重20キロ減の壮絶闘病10カ月 “7時間30分”命懸けの大手術…昨年末に起きていた体の異変
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《独占スクープ》敏腕プロデューサー・SKY-HIが「未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し」、本人は「軽率で誤解を招く行動」と回答【NHK紅白歌合戦に出場予定の所属グループも】
週刊ポスト
世間を驚かせたメイプル超合金のカズレーザー(41才)と二階堂ふみ(31才)の電撃“推し婚”
【2025年・有名人の結婚&離婚を総決算】何かと平和な「人気男性タレントと一般女性の結婚」、離婚決断が女性からの支持につながった加藤ローサ
女性セブン
米倉涼子
《米倉涼子の自宅マンション前に異変》大手メディアが集結で一体何が…薬物疑惑報道後に更新が止まったファンクラブは継続中
火事が発生したのは今月15日(右:同社HPより)
《いつかこの子がドレスを着るまで生きたい》サウナ閉じ込め、夫婦は覆いかぶさるように…専門家が指摘する月額39万円サウナの“論外な構造”と推奨する自衛手段【赤坂サウナ2人死亡】
NEWSポストセブン
自らを「頂きおじさん」と名乗っていた小野洋平容疑者(右:時事通信フォト。今回の事件とは無関係)
《“一夫多妻男”が10代女性を『イヌ』と呼び監禁》「バールでドアをこじ開けたような跡が…」”頂きおじさん”小野洋平容疑者の「恐怖の部屋」、約100人を盗撮し5000万円売り上げ
NEWSポストセブン
ヴァージニア・ジュフリー氏と、アンドルー王子(時事通信フォト)
《“泡風呂で笑顔”の写真に「不気味」…》10代の女性らが搾取されたエプスタイン事件の「写真公開」、米メディアはどう報じたか 「犯罪の証拠ではない」と冷静な視点も
NEWSポストセブン
来季前半戦のフル参戦を確実にした川崎春花(Getty Images)
《明暗クッキリの女子ゴルフ》川崎春花ファイナルQT突破で“脱・トリプルボギー不倫”、小林夢果は成績残せず“不倫相手の妻”の主戦場へ
週刊ポスト
超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”だった高橋麻美香容疑者
《超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”の素顔》「白血病が再発して余命1か月」と60代男性から総額約4000万円を詐取か……高橋麻美香容疑者の悪質な“口説き文句”「客の子どもを中絶したい」
NEWSポストセブン