国内

検査控えの恐ろしさ がん発見が1か月遅れると死亡率1割上昇も

(写真/時事通信社)

初期の胃がん手術を行った東ちづる(写真/時事通信社)

 義足ダンサーや車椅子ダンサー、全盲シンガー……各ジャンルで活躍する摩訶不思議なパフォーマーたちが集う「まぜこぜ一座」。3月22日、東京・渋谷で舞台『月夜のからくりハウス 渋谷の巻』が行われ、座長を務める東ちづる(60才)も舞台に立った。

 しかし、もう少し「異変」に気づくのが遅かったら、東はその舞台に立っていなかったかもしれない。昨年11月、東は胃の痛みや貧血、嘔吐の症状が出たため、病院を受診。当初は胃潰瘍からの出血と診断されたが、念のために受けた精密検査で胃がんが見つかったのだった。

「検査でも発見するのが難しいごく初期の胃がんで、転移もなく、内視鏡の手術で完全に切り取りました。(担当医には)感謝しかありません」

 3月18日、舞台のけいこ場取材で、そう笑顔で語った東。「超」がつくほどの初期症状での早期発見が彼女の命を救ったが、実は新型コロナの影響で彼女は非常に幸運なケースになってきている。新型コロナの感染を恐れて、持病や軽い症状があっても病院を受診するのを控えたり、がん検診を受けるのをやめる人が増えているからだ。

 国内では例年1000万人以上ががん検診を受けるが、コロナによる検診控えで受診者が激減。1回目の緊急事態宣言と重なった昨年4~6月の検査は、前年同期比で100万件以上も減少した。一時持ち直したものの、2度目の緊急事態宣言で再び受診控えが急増。2020年度通年では、300万件の減少が見込まれる。

 実際、佐賀県では2020年4~9月の胃がん、乳がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がんの「5大がん」の検診者数が、前年同期と比べて49.6%も減ったという。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんは「コロナ禍によるがん検診控えに強い危機感を抱いている」と語る。

「検査を受けるのを控えれば、それだけがんの早期発見が遅れてしまう。がんの発見が1か月遅れると、死亡率が10%前後も上がるという報告もあります」(一石さん)

 コロナが怖いからと病院に行くのに二の足を踏んでいるうちに、がんが進行し、最悪命を落とす—そんなことにならないよう、初期がんの「見逃せないサイン」をしっかりチェックしたい。

※女性セブン2021年4月8日号

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