当時自民党幹事長だった小沢一郎氏は本誌インタビュー(2019年5月3日・10日合併号)に、〈あの時に北海道かどっかにいた金丸さんが電話で「冗談を言うな」というようなことを言ってきて、海部さんがびびった〉〈海部さんは(金丸さんが)“非常に怒っている”という意味にとらえたんでしょう〉と述懐している。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、菅首相と三木、海部両首相との共通点をこう語る。
「解散権を行使するには強い党内基盤が必要。三木氏も海部氏も弱小派閥の出身で、大派閥が反対する解散はできなかった。菅首相も無派閥で党内基盤が弱い。だからこそ、菅さんは政権の求心力を強めるために、4月解散の姿勢を見せて自分に解散権があることを誇示しようとしたのでしょう」
だが、三木氏や海部氏のように、解散に踏み切ることはできなかった。
「解散しようとして、それができない総理の権力は地に落ちる。自民党内には菅さんには伝家の宝刀を抜く力量も度胸もないという見方が強まっている。これでトリプル補選(4月25日投開票の北海道、長野、広島の衆参補選)の結果が悪ければ、完全に解散権を封じられ、与党内で菅降ろしの動きも始まるでしょう」(同前)
※週刊ポスト2021年4月30日号