新型コロナウイルス感染の発覚は、本人だけでなく、周囲にも大きな影響を及ぼす。感染者が少ない地方では、「コロナ差別」も問題になっている。それだけに、「できるだけ感染したことは知られたくない」と考えるのは自然なことだが、「隠しておくのも周りに悪い」と思い悩む人は多い。千葉在住で、アパレル店に勤務する女性Aさん(40代)は、困惑した表情で言う。
「3月下旬、私が新型コロナに感染すると、勤務シフトがカブっていた同僚たちは『濃厚接触者』となり、PCR検査を受けることになりました。全員、陰性だったのでひとまずホッとしていますが、私の感染は社内だけでなく、取引先にも知れ渡っているようで……。仕事への復帰がためらわれます」
新中野耳鼻咽喉科クリニック院長の陣内賢さんは、「感染が発覚しても、わざわざ自分から周囲に連絡する必要はありません」と指摘する。
「まずは保健所の聞き取り調査に正直に答えてください。濃厚接触者にあたる人や、会社や学校などの所属団体には、保健所から連絡します。むやみに、濃厚接触をしていない知人や、同居していない親族などに連絡しても、いたずらに不安をあおるだけです」(陣内さん)
厚労省は濃厚接触者の定義を「1m以内かつ15分以上の接触」としている。ただ、家族が感染した場合は違う。
「配偶者や子供など同居人の場合、基本的に濃厚接触者となります」(陣内さん)
厚労省の指導によると、もし濃厚接触者になったら、感染者と接触してから14日間は不要不急の外出を控え、原則、PCR検査を受ける。また、職場や学校には連絡すべきだとされる。
ただし、保健所が勝手に連絡をすることはなく、それらに法的な根拠はない。つまり、濃厚接触者になっても、自宅待機を拒否したり、職場や学校には本人が黙っていることもできる、というわけだ。
「濃厚接触者がそれを周囲に伝えるかどうかは、その人の判断によります。事実上、ある種の“黙秘権”が認められています。ただし、周囲に感染拡大を招く可能性があることを認識の上、行動には充分に注意してください」(大融寺町谷口医院院長の谷口恭さん)