重厚でありながら、難解でないところも、この作品の素晴らしいところだ。
「かつて淀川長治先生が、『映画は誰が観てもわかるものでなきゃダメ。チャップリンの映画は、国境も超え、子供でもわかるでしょ』とおっしゃっていましたが、『ゴッドファーザー』はまさにそうでした。
淀川先生といえば、テレビでは優しいけれど、『〈タイタニック〉は映画自体が沈んじゃってる』とか、結構辛辣で(笑い)。それでも、『どんな映画にも必ず1つはいいところがある』とおっしゃった。そうした言葉や『日曜洋画劇場』の解説を通じて、先生からは映画の見方を教わった気がします」
ムシャクシャしたときは笑いも効果的。“笑いのプロ”である小堺は、ピンク・パンサーシリーズのピーター・セラーズ主演のコメディー映画『チャンス』をすすめる。関根勤や明石家さんまも好きな作品だそうだ。
「これは、コメディーの“ハーバード大学”といえる、笑いの真骨頂的作品です。
庭師のチャンスは、数十年間家から出たことがなく、テレビでしか世間を知らないので、怖い人が来るとリモコンで消そうとする(笑い)。また、ひょんなことから政財界の要人に会うことになり、難しい経済の話を振られると、『春が来ない冬はない。水をたっぷりとあげてください』と、庭師として当たり前のことを言っているだけなのに『おお、深い!』と祭り上げられ、大統領候補にまでなっていくという突飛なストーリー。
怪演で知られるセラーズが、普通の芝居をしているだけなのにものすごく面白いんです。そして最後は『うーん……』と考えさせられる終わり方。続きはぜひ観てください」
『ゴッドファーザー PART I』
イタリア系マフィア・コルレオーネ家の興亡を描く壮大な家族ドラマ。PART I~IIIまでの3作がある。
監督:フランシス・F・コッポラ、原作:マリオ・プーゾ、出演:マーロン・ブランド、アル・パチーノほか。1972年・米。175分。
ブルーレイ2075円 、DVD1572円。発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント。
『チャンス』
無垢な庭師チャンスが、主人の死を契機に社会に放り出され、一躍時の人となっていく。社会風刺の効いたコメディー作品。
監督:ハル・アシュビー、出演:ピーター・セラーズほか。1979年・米。124分。
『チャンス30周年記念版』デジタル配信中。ブルーレイ2619円、DVD1572円。発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント、販売元:NBC?ユニバーサル・エンターテイメント。
【プロフィール】
小堺一機(こさかい・かずき)/1956年生まれ。1984年フジテレビ系『ライオンのいただきます(後に、ごきげんよう)』の司会に抜擢される。現在、サッカー・本田圭佑選手がCEOを務める各界のトップランナーの「声」が聴ける定額制音声サービス『NowVoice』に参画中。存分に映画を語る配信トークライブ『小堺一機とおしゃべりLIVE』第2回を今夏、開催予定。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2021年5月6・13日号