近年、“事故物件芸人”が注目を集めるなど、お笑い芸人によるホラーエンタテインメントが話題を呼んでいる。一見すると相性が悪く見えるお笑いとホラーだが、掛け合わせることで大きな魅力になるようだ。
時に“物件ホラー”とも言われる現在のブームの火付け役となったのが、お笑い芸人の松原タニシだ。“事故物件住みます芸人”を名乗る彼は、いわゆる“事故物件”に実際に居住して心霊現象を検証するトークで注目を集め、2018年には実話怪談集『事故物件怪談 恐い間取り』を刊行。2020年には亀梨和也主演で映画化されて話題を呼んだ。
さらに今年1月には“お笑い第7世代”として活躍する若手芸人たちが出演したホラー映画『劇場版 ほんとうにあった怖い話 事故物件芸人』が公開。続編も5月14日に公開を控えるなど、お笑い芸人を中心とした“物件ホラー”の映画が相次いで製作されているのである。
これまでも、お笑いタレントの稲川淳二による怪談が人気を博したり、お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志が司会を務める『人志松本のゾッとする話』が話題を呼んだりするなど、お笑いとホラーの掛け合わせは注目を集めてきた。
楽しく笑うことと恐怖に身がすくむことは、一見すると正反対の感情のようにも見える。なぜお笑いとホラーの掛け合わせがたびたびブームを巻き起こしてきたのだろうか。
元お笑い芸人で、現在は日本笑い学会の理事も務める社会学者の瀬沼文彰氏(西武文理大学専任講師)はこう言う。
「ホラーとお笑いはいずれもエンタテインメントなので、相反するように見えますが相性はいいはずです。日本にも古くから滑稽噺、怪談噺があります。いずれも、話術に長けた落語家、講談師が語ってきました。
日本でのホラーブームはこれまでにも一定の周期でしばしばおとずれていますが、今回ブームを牽引したのはお笑い芸人でした。歴史的にみても話芸が重視されてきたという意味では違和感がありません」