そう言われて、師匠の後ろでギターを弾き出した。その頃、師匠はミュージカル落語といって、ほとんど立ったまま芸をするスタイルだったから、それに合わせてギターを弾いて。それがギター漫談をするようになったきっかけです。1970年2月に付き人を辞めて独り立ちする時は、師匠が玄関で歌って見送ってくれました。
師匠はその10年後、54歳で亡くなってしまいました。前の年から入院したりして体調は悪かったけど、まさか亡くなるとは思わなかった。虫の知らせじゃないけど、亡くなる数日前に家に呼び出されたんです。師匠の部屋に行ったら小さなライトだけつけて、師匠がスパイ映画とかに出てきそうな高い背もたれのある椅子に座っている。
挨拶したら「ペー、気持ち悪くなっちゃったよ」って言うから顔を覗き込んだら、サングラスをしてるんですよ。具合が悪いのを見せたくなかったんでしょうね。それでも「スターは夜でもサングラスかけるんだよ」って言うあたりが洒落っ気のある師匠らしい。
それが最後の言葉で、今でもあの時の師匠の姿を思い出します。
※週刊ポスト2021年6月18・25日号