2017年の暴力事件では、同郷の日馬富士だけが廃業に追い込まれた(時事通信フォト)
関係者の不信は、そうやって積み重なってきた。好角家として知られ、角界の暴力問題を巡って再発防止検討委員会の外部委員を務めた経験もある漫画家・やくみつる氏は、「来たるべき白鵬の引退会見に注目したい」と話す。
「自分が偉大な横綱であったというような、自画自賛の言葉は聞きたくありません。これまで問題となった数々の言動について、その場できちんと自己批判してもらいたい。協会は、白鵬が親方として指導者になることを認めるにあたって、“過去の自らの言動について反省の意を表明すること”を条件に課してもいいくらいだと考えています。
他のスポーツでもそうですが、現役時代にいい成績を残したからといって、指導者に相応しいとは限らない。白鵬に親方としての資質・資格があるのか、協会はきちんと検討すべきでしょう」
たしかに、白鵬の言動を批判的にとらえながら、結果としてそのままにしてきた協会の責任も問われて然るべきだ。協会の公益財団法人化に際して設置された、「ガバナンスの整備に関する独立委員会」で副座長を務めた慶應大学商学部の中島隆信教授はこう言う。
「協会のやり方は非常に不透明。白鵬に対して非常にネガティブな評価をしていて、そのままの姿勢で協会に残ることには否定的なようだが、外部有識者会議が一代年寄を否定したことにしても、どこまで協会の意向が介在したのか分からない。
10年前の独立委員会での議論でも、親方になるうえでは力士としての実績だけでなく、社会人として相応しい知識や人間性などの適格性を加えるべきだと指摘したが、何も改めずに今日に至っている。協会の対応が不透明だから、白鵬が延命を画策する真意も見えづらくなっている」
※週刊ポスト2021年7月16・23日号