多くのページに、丁寧に書き分けられていた(代表撮影JMPA+藤岡雅樹)
和田毅曰く「甲斐の成長は努力の賜物」
福岡ソフトバンクホークスは、12球団の中でもデータ野球の最先端を走っているチームだ。
トラックマンという弾道測定器だけでなく、映像をAIで解析するファストモーションと呼ばれる装置も導入。昨年まで日本シリーズ4連覇の偉業は、それらのデータをまとめるチーム戦略室なくしては果たせなかっただろう。侍ジャパンのホームベースを守るのは、日本で最も短期決戦に強い捕手なのだ。
ホークスで甲斐とバッテリーを組むベテラン左腕・和田毅によると、甲斐は遠征地への移動中は「常にチームから配給されたタブレットでデータをチェックしている印象が強い」そうだ。
「アナリストの人たちとも、よくコミュニケーションをとっていますね。そして試合前のミーティングで投手陣の意見も取り入れながら、攻め方の確認作業をしっかりして試合に臨みます」(和田)
甲斐は高校卒業後、2010年育成選手ドラフト6位でホークスに入団。3年目に支配下登録された後も、着実にステップアップし、プロ7年目に遂にホークスの正捕手の座を掴み取った。
現在のプロ野球界で、最も出世した育成選手といってもいいだろう。前出の和田は、甲斐の成長の理由を「ホークスでの環境にある」と分析してくれた。
「まず拓也が1軍に上がり始めたときに細川(亨)さん、鶴岡(慎也)、高谷(裕亮)と素晴らしい先輩がいたことですね。今でも高谷がいるのはすごく大きいと思います。工藤(公康)監督も、甘やかさずに厳しい起用姿勢を貫いているように感じますし、そんな中、達川(光男、ホークス元ヘッドコーチ)さんや城島(健司)さんというレジェンドに教えを受け、そして現在のバッテリコーチである吉鶴(憲治)さんという相談役もいる。成長するために恵まれた環境を自分で生かし、挫けそうになった時に何クソと這い上がって努力を積み重ねてきた賜物。今のポジションを築いたのは必然だと思います」(和田)
その甲斐が重ねてきた努力の一端が、この甲斐ファイルである。東京五輪・準決勝の韓国戦までの4試合での反省点も、既にファイルに書き加えられているだろう。
甲斐ファイルが、侍ジャパンを悲願の金メダルに導く。