自宅で取材に応じる佐藤愛子さん
そんな先生が、断筆宣言をすると伺って、大慌てで『九十八歳~』を読ませていただきました。
電話の受話器を握ったまま、昏倒されたお話。検査を受ける前に、桃を半分食べて検査が受けられなかったお話。どれも、本来なら深刻なヤマイの話なのに、なぜか吹きだしてしまいました。負のパワーがまったく感じられないからです。ぐんぐんと生きる力というのでしょうか。だから、お医者さんから「ダメです! 書くのをやめたら死にます!」と言われたと、さらりと書かれ、だったら「書くのをやめたら、ホントに死ぬかどうか験(ため)してみるんだよ」と、言えるのですね。その圧倒的なさばけた生き方は、いまどきの言い方をすると「かっこよすぎ」です。
先生からいただいた葉書で「あんたは並みのおなごではない」とお褒めの言葉(私が勝手に褒められたと理解しているのですが)を頂戴したことがありました。何かの特集番組で、私が戦地や災害現場からリポートしていた過去の映像が流れたのをご覧になったとのことでした。この「並みのおなごではない」の一言は、折に触れて私の背中を押してくれました。でも、先生こそが「並みのおなごではない」の大大大先輩です。だから、「筆を措(お)かれる」と宣言されても、書き損じの原稿用紙を「メモにします」と言われても、どうもピンとこないのです。「ピンとこないのは、あんたの勝手」とバッサリされそうですが、だって本のタイトルだって『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』ですよ。先生の憤怒の爆発がこれからのニッポンにますますの活ッ!をいれてくれることを、私もいちファンとして切に願っております。
途中、かかってきた電話に対応も
【プロフィール】
安藤優子(あんどう・ゆうこ)/1958年生まれ。キャスター、ジャーナリスト。『FNNスーパータイム』『FNNスーパーニュース』『直撃LIVE グッディ!』などのメインキャスターを務める。インスタグラム@yukoando0203
撮影/江森康之
※女性セブン2021年8月19・26日号