感染力の強い新型コロナウイルス「デルタ株」が猛威を振るい、子供の感染者が急増している。厚生労働省によれば、7月20日までの1週間で3450人だった10代以下の感染者数は、8月17日までの1週間で2万2960人になり、6倍以上に増加した。
子供がウイルスを自宅に持ち帰り、家庭内感染に発展するケースも報告され始めた。感染拡大を危惧し、「夏休みの延長」や「臨時休校」の策を講じて授業の再開を遅らせる学校も出始めている。
年齢が低い子供の方が、多くの人に感染を広める「スーパー・スプレッダー」になるとの研究もある。カナダのPHO(オンタリオ州保健機関)は、子供を原因とする家庭内感染が発生した6280世帯を調査した。研究チームの論文によると、14~17才が家庭内の誰かに感染させる確率を基準にした場合、0~3才は1.43倍、4~8才は1.40倍、9~13才は1.13倍も他人に感染させるリスクが高くなった。
これを受けて論文は、「年齢の低い子供の方が、誰かに感染させる可能性がある」と指摘した。すなわち、乳児から小学校低学年くらいの年代が、最も「スプレッダー」になりやすいのである。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんはいう。
「子供は小さいほど家族と接する時間が長く、感染させるリスクが高い。しかもコロナに感染して自宅療養になった場合に、大人ならまだしも、子供を家庭内で完全隔離するのは事実上不可能です。手をかけざるを得ないので、必然的に親が感染する可能性が高くなります」
ひとつの可能性として親がワクチンを接種していても、安心とは言い切れないという。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広さんはいう。
「たとえ親がワクチンを打っていても、デルタ株が相手では成人の有効率は40%程度まで下がるともいわれています。接種後の時間の経過とともに有効率は下がっていくので、子供がワクチンを接種済みの親にうつすケースは充分にあり得ます」
高齢者から順番に実施されたワクチンの接種が、「家庭内ワクチン格差」をもたらすかもしれない。
「たとえば3世代同居で家庭内感染が発生して、おじいちゃんとおばあちゃんはワクチンを打ったから軽症で済む一方、ワクチン接種の予約が取れずに未接種のお父さんやお母さんが重症化してしまい、救急車を呼んだのに搬送先がない、という事態も起こり得ます」(上さん)
次女の看病から家族全員に感染
子供からの家庭内感染は、自宅療養が難しいことも問題点としてあげられている。都内在住の40代の主婦A子さんは夫と小6の長女、小3の次女の4人家族。幼い子供たちを感染させないよう日頃から感染対策を徹底していたが、7月末に次女がゴホゴホとせき込むようになった。