そうした経緯から、川崎医大病院ではジェネリック導入に「より慎重になった」のだという。
「医師や患者さんからの『現場の声』はやはり重視しなければならない。大学病院・特定機能病院としての高度な先進的医療、安心・安全な医療が期待されるなかで、現時点でジェネリックの利用に慎重になることは、患者さん中心の医療を考えた結果であります」(同前)
一方、ジェネリック医薬品普及のためのインセンティブ制度(診療報酬加算)には賛意を示す。
「患者負担の軽減や医療保険財政の改善策として有効な手段です。我々も、『ジェネリックだから駄目』ではなく『いいものが出れば使う』というスタンスではあります」(同前)
そうした医療現場の要請とは裏腹に、ジェネリックの製造現場では不祥事が相次ぎ、製品の供給も滞った。どうすれば安心してジェネリックが使用できるようになるのか。
「先発医薬品と製法や原薬、添加物がまったく同一の『オーソライズド・ジェネリック』のようなものが安定供給できる仕組みを作っていただきたい。生物学的同等性試験などで効果や安全性が承認されても、その後の製造過程で不具合がないとは言えません。
すべての製造過程において、厚労省の完璧なお墨付きがあれば、安全性が担保されたと言えるでしょう。そうなれば、当院も再びジェネリック医薬品を導入するようになると思います。ですがそれがいつになるのかは分からない。いまは注視しているところであります」(同前)
命と健康を守る医療の現場では、「安かろう、悪かろう」は許されない。患者自らが服用する薬についての知識と理解を深める必要がある。
※週刊ポスト2021年11月5日号