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虹の松原事故で小5男子を失った母、3159万円賠償を求める想い

提訴の日、辿皇くんに「がんばってくるよ」と声をかける母・明日香さん。左に飾られている絵が今回のミラクルを引き起こした。

提訴の日、辿皇くんに「がんばってくるよ」と声をかける母・明日香さん。左に飾られている絵が今回のミラクルを引き起こした。

 特別名勝・虹の松原(佐賀県唐津市)の国道で、道路際の松の木が折れ、走行していた車に落下して衝突し、川崎辿皇(てんこう=当時11才)くんが死亡した事故(2019年7月20日)。虹の松原と県道の管理がずさんであったとして、国、佐賀県、唐津市に対し、母親の明日香さんが損害賠償を求めた。

 2月28日、佐賀地裁に訴状を提出し、佐賀市内で記者会見が行われた日の朝、明日香さんは仏壇の辿皇くんに「がんばってくるよ」と声をかけて手を合わせた。

訴状を佐賀地検に提出した後、今回の提訴について佐賀市内で会見が行われた。写真右から、代理人弁護士の高橋正人さん。明日香さん、辿皇くんの祖母・京子さん。

訴状を佐賀地検に提出した後、今回の提訴について佐賀市内で会見が行われた。写真右から、代理人弁護士の高橋正人さん。明日香さん、辿皇くんの祖母・京子さん。

 まず、今回の提訴について2点の素朴な疑問がある。

 3年前の事故で、なぜいま提訴なのか。

 そして3159万9361円という請求額は何が根拠なのか。

 明日香さんに投げかけると、

「“なぜいま”なのか、は少し遡ることになります」

 とひとつめの質問から答えてくれた。

「1年前には、こんな日が来るとは全く想像していませんでした」

 と話すその傍らには、辿皇くんが描かれた1枚の絵。この絵がきっかけでミラクルな連鎖が起こり、今日に至ったというのだ。

「自然や動物が大好きで、やさしくて、宝物のよう」だった辿皇くんを突然失ってしまった明日香さん。その悲しみに追い打ちをかけることが次々と起こった。

自然が大好きで、動物にもやさしかった辿皇くん。

自然が大好きで、動物にもやさしかった辿皇くん。

「ひまわりのように明るい元気な子だった」と祖母の京子さんは思い出を語ってくれた。

「ひまわりのように明るい元気な子だった」と祖母の京子さんは思い出を語ってくれた。

 車の上に突然、松の木が直撃した、という明日香さんの主張は捜査機関に聞き入れられず、運転していた明日香さんに非があるとされた。

 さらに、「飲酒運転だった」「携帯をいじっていた」「保険金3億円もらった」「名前が悪い」・・・・・・といった事実でない噂や誹謗中傷の嵐。

 明日香さんは、髪を洗うたびに、指にはごっそり抜けた髪がつくようになり、精神的にも体力的にももう限界だった。

 そんなとき、TikTokでたまたま見つけたアーティスト・小野裕人さんの動画に惹きつけられ、「息子の絵を描いてほしい」と思いきって連絡し依頼した。

 福岡出身の小野さんは、虹の松原で起こった事故も知っていて、辿皇くんの絵と事故について伝える動画を制作。SNSで配信してくれた。

 それがきっかっけで、『一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会』代表理事の小沢樹里さんにつながっていった。

 さらに、親身に相談にのってくれた小沢さんから、「遺族に寄り添ってくださる弁護士の先生」として紹介されたのが、池袋暴走死傷事故の遺族側の代理人弁護士も務める高橋正人さんだった。

「全国的なご活躍をされる高橋先生に、まさか地方にいる一般人がお願いできるなんて思わなかったのですが、私の話を丁寧に聞いてくださり、引き受けていただけたんです。そうでなかったら、とても、国、県、市への提訴なんて考えられませんでした」(カッコ内、以下、内山さん)

 それが昨年6月。さらに、提訴へ向けて明日香さんの気持ちを後押ししたのは、応援してくれる人達がいる、と実感できたことだった。

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